Pink Floydのキーボード奏者
Richard Wrightのソロ・アルバム
ピンク・フロイドのあの雰囲気を担っていたのはリチャード・ライトのキーボードだと思う
その" 雰囲気 "を充分に味わえるアルバムで、ソロ・アルバムなのに派手なプレイは一切なく、
それどころかほかのプレイヤーの演奏のほうが目立つ具合である
とはいえ、この雰囲気作りは素晴らしく、またヴォーカルも味わい深い
このアルバムは、ピンク・フロイドのツアー・ミュージシャンであるスノーウィ・ホワイトがギターを
担当、デヴィッド・ギルモアのバックで弾いていた人で、渋いギターをこのアルバムでは聴かせている
ミディアムなテンポ、メロウなナンバーで綴られるこのアルバムは、ピンク・フロイドのファンで
なければ知り得ることのないアルバムであろう
§ Recorded Music §
1 Mediterranean C - メディトレニアン C
2 Against the Odds - アゲインスト・ザ・オッズ
3 Cat Cruise - キャット・クルーズ
4 Summer Elegy - サマー・エレジー
5 Waves - ウェイヴス
6 Holiday - ホリディ
7 Mad Yannis Dance - マッド・ヤニス・ダンス
8 Drop in from the Top - ドロップ・イン・フロム・ザ・トップ
9 Pink's Song - ピンク・ソング
10 Funky Deux - ファンキー・ドゥー
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淡々とした曲が並び、いかにも彼の人柄が表現されている
年代から1977年にリリースしたピンク・フロイドの" アニマルズ "の雰囲気が感じられ、アナログは
見開きジャケットでヒプノシスのデザインが素敵である
ヴォーカルはもちろん本人がやっており、決して上手くはないが味がある
リリカルなピアノを核として穏やかな音楽が流れ、メル・コリンズやスノーウィ・ホワイトも
出しゃばらずにいい仕事をしている
これらの曲を聴くと本当に地味ながら優しくて温厚な人柄だったのだろうと思う
そして、あの4人のピンク・フロイドの空気感は、このキーボードがなければ醸し出されないことも
よく分かる
一方、歌詞に目を通してみると、リチャード・ライトのピンク・フロイドに対する( ロジャー・
ウォーターズに対する )その鬱屈した心情に少なからず暗澹とした気持ちにさせられる
近年、デヴィッド・ギルモアやロジャー・ウォーターズのインタビューを読む機会に比較的恵まれ
当時のお互いに抱いていた感情を知るにつけ、なかでもロジャー・ウォーターズのコメントは、まるで
ついさっきまで一緒にいたかのようなナマの感情にあふれていて、うんざりさせられることも多いが
" それなら、私も言わせてもらうが… "的なリックの言い分を読まされているような気持ちにもなる
" 夢精 "という意味のアルバム・タイトルを冠した本作は、リチャード・ライトのソロ作品で、この後
1984年にはファッションのデイヴ・ハリスとのZEE名義のアルバム" アイデンティティ "、1996年には
遺作になってしまった" ブロークン・チャイナ "を発表するわけだが、思えばリチャード・ライトという
音楽家は巨大化したピンク・フロイドというバンドの中でも本当に地味な存在だった
その姿勢は一連のソロ作品の中でも全く変わらず、楽器も歌もそれほど上手ではなかったのだが
目が離せないミュージシャンの一人だった
2008年9月15日、癌のため逝去…インストゥルメンタルのソロ・アルバム制作中であったとか…
何れにしても、音楽ファンにとってミュージシャンの死はとても悲しいものだ