稀代のゴールデン・コンビ、Jon & Vangelisの
第3弾コラボレーション・アルバム" Private Collection "
ジョン・アンダーソンとヴァンゲリス・O・パパサナシューの" プライヴェイト・コレクション "が
" フレンズ・オブ・ミスター・カイロ "から約2年ぶりの1983年にリリースされた
めざましい活動を見せていて、巾広い音楽ファン層から注目を集めるようになっていた
そして、その" 炎のランナー "のサウンド・トラック盤を発表して以来、ヴァンゲリス本人の演奏による
作品はレコード化されていなかったので、このアルバムは新しいヴァンゲリス・ファンにとっても、
昔からのファンにはなおさら待望久しかった新作であった
一方、ジョン・アンダーソンにとっては、このアルバムとこのコンビでの前作の間にソロ・アルバム
" アニメーション "があり、1982年リリースだったことから約1年ぶりの登場である
前作" フレンズ・オブ・ミスター・カイロ "は、" 炎のランナー "人気ももちろんあったが、その中身の
良さで各国のヒット・チャートに乗るというヒットぶりをみせ、このゴールデン・コンビの存在も以前に
増して知られるようになったといってよかった
§ Recorded Music §
1 Italian Song - イタリアン・ソング
2 And When the Night Comes - アンド・ホエン・ザ・ナイト・カムズ
3 Deborah - デボラ
4 Polonaise - ポロネーズ
5 He is Sailing - ヒー・イズ・セイリング
6 Horizon - ホライゾン
ジョン・アンダーソンは、1944年10月25日にイギリスのランカシャー地方の農村アクリントンで
生まれている
1963年に兄のアンソニーらと結成したバンド、ウォーリアーズでプロとしてデビュー、その後ガンなどの
バンドを経て、一時ハンス・クリスチャンの名でソロ歌手としても活動していた
1968年ロザ・シンというバンドのベーシスト、クリス・スクワイアーと出会い、イエスを結成
ジョン・アンダーソン、クリス・スクワイアー、スティーヴ・ハウ、リック・ウェイクマン、ビル・
ブラッフォードという編成時代にイエスは最盛期を迎え、70年代初期の" プログレッシブ・ムーヴメント "
の中で、ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、EL&Pとともに" プログレ四天王 "の一角を成したが
1979年のクリスマスごろに起きたイエスのほかのメンバーとのトラブルをきっかけにイエスを脱退、ソロ
シンガーとしてこの当時活動をしていた
ヴァンゲリス・O・パパサナシューは、1943年3月29日にギリシャのボロスで生まれている
アテネ美術学校で絵画を学ぶ一方で、フォーミンクスというバンドで活動していた
また、クラシック・ピアノも正規にレッスンしていた
パリ在住時に友人デル・ルソスとパリで知り合ったギリシャ人ルーカス・シデラスと冗談半分で" 涙と雨 "
という曲をレコーディング、ところがこの曲がヨーロッパを皮切りに全世界で大ヒットしアフロディテス
チャイルドと名付けられた彼ら3人は一躍ポップスターになった
その後、ポップなアルバムを2枚発表して解散するが、ヴァンゲリスのクラシックと地中海の民族音楽の
要素を生かした傑作" 666 "をアフロディテス・チャイルドを再結成して発表、これを契機に革新的な
ミュージシャンとしてヴァンゲリスの名前が知れ渡った
1974年には、上述のジョン・アンダーソンのバンド、イエスへの加入が噂されるが結局は実現せず、後に
ジョンとデュオという形へと展開した
この" プライヴェイト・コレクション "は、これまでのジョン&ヴァンゲリス作品同様に、ジョン・
アンダーソンが詞を書き歌い、ヴァンゲリスが作曲、編曲プロデュースをしている
そしてこのアルバムの特徴としては、前作とは変わってゲスト・ミュージシャンがひとりも参加して
おらず、すべてを2人で作り上げている点である
そのせいか、前作で示されたファンキーなムードは姿を消し、本来両者が持つロマンティシズムを凝縮
したかのような清輝で爽快なサウンドに満ちあふれている
ジョン&ヴァンゲリスとしては、はじめての大作で23分にもわたって演奏し歌われる" ホライゾン "の
見事なまでの美しさは、スポンテニアスな魂から生まれた自然な構築美を感じさせるもので、ジョン&
ヴァンゲリスという類稀なるゴールデン・コンビの魅力を存分に表した壮大な人間賛美となっている
" プライヴェイト・コレクション "は、音楽ファンが共有できる至宝の音楽をいっぱい詰め込んだ音楽の
宝石箱といえる作品集である