Pink Floydの楽曲をオーケストレーション
あるジャンルの曲を別のジャンルに置き換えるという試みは、昔から行われてきた
古いブルース・ナンバーを新しい解釈で演奏するという、ジミー・ペイジが初期のレッド・ツェッペリン
で行ってきた行為などは、その典型だと思う
ロックをクラシック風にアレンジするというのもそれに等しい
このアルバムはデヴィッド・パーマーという人が選曲し、アレンジ( オーケストレーション )して
一連のシリーズ物の一環として、1989年に発表されたピンク・フロイドのカバー集である
* スティーヴ・ハケットのギターでピンク・フロイドの曲を弾くと、どう化けるか興味津々だった
§ Recorded Music §
1 Run Like Hell - ラン・ライク・ヘル
2 Another Brick in the Wall PtⅠ,The Happiest Day of Our Lives,Another Brick in the Wall PtⅡ
アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール Pt1~ザ・ハピエスト・ディズ・オブ・アワ・ライヴス~アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール Pt2
3 Goodbye Blue Sky - グッバイ・ブルー・スカイ
4 Money - マネー
5 Hey You - ヘイ・ユー
6 Wish You Were Here - あなたがここにいてほしい
7 On the Turning Away - 現実と差異
8 Shine on You Crazy Diamond ( Part 1-5 ) - 狂ったダイアモンド
9 When the Tigers Broke Free,Eclipse - ホエン・タイガーズ・ブロークン・フリー~狂気日食
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このアルバムのもうひとりの主人公であるデヴィッド・パーマーは、イアン・アンダーソン率いる
ジェスロ・タルのキーボーディストとして" 神秘の森 "から" ストームウォッチ北海油田の謎 "まで参加
している
また、ジェスロ・タルに正式加入する以前にも、彼はタルの初期のころからアレンジなどを手伝っていた
彼の企画によるジェネシスといい、イエスといい、このピンク・フロイドといいプログレッシヴ・
ロックが好きなようである
当然のことだが、こういった企画物の場合、選曲とアレンジ( オーケストレーション )がすべてと
いうことになる
それはまた、企画者がそれらの楽曲にどれだけ愛情を持っているかということにほかならない
しかしながら、つまるところ、いかに原曲がいい曲であるかということになる
どうしても、他人の褌で相撲をとっている訳であるから…
このアルバムに取り上げられている9曲は( 正確には12曲 )は、" 狂気 " " 炎~あなたがここにいて
ほしい " " ザ・ウォール " " 鬱 "からの選曲になっている
❐ Run Like Hell - ラン・ライク・ヘル ❐
冒頭部分が妙に明るく、ちょっとクリスマス風なのとスティーヴ・ハケットのギターがデヴィッド・
歓声のSEにのせてこの曲を持ってくるあたり、さすがピンク・フロイド・ファンかと
❐ Goodbye Blue Sky - グッバイ・ブルー・スカイ ❐
オーケストレーションを楽しんでいるという点では、この曲が一番いい例ではないか
途中、バロック風のフレーズをさり気なく挿入するあたりに、デヴィッド・パーマーの余裕を窺う
ことができる
❐ On the Turning Away - 現実と差異 ❐
それなりに味のあるヴォーカルはともかく、オリジナルでに一番の聴かせどころであるギター・ソロを
短縮されているのが非常に残念だが、ここではヴォーカル曲として解釈されているようで、個人的には
スティーヴ・ハケットに好き勝手に弾かせたほうが、もっと面白くなった楽曲のような感じがする
❐ Shine on You Crazy Diamond - 狂ったダイアモンド ❐
オリジナルは13分にもおよぶ大作だったが、ここでは10分弱にまとめられている
高層ホテルのバー・ラウンジから夜景を見下ろしているような冒頭のサックスはいたたけないが、例の
フレーズからはアラン・パーソンズを彷彿させるようなものがあり、いい感じに仕上がっている
❐ When the Tigers Broken Free,Eclipse - ホエン・ザ・タイガーズ・ブローク・フリー~狂気日食 ❐
アルバムの最後を飾るにはふさわしいこの曲は、なかなか手が込んでいる
" ホエン・ザ・タイガーズ・ブローク・フリー "は、映画『 ザ・ウォール 』のためにロジャー・ウォー
ターズが書き下ろしたナンバーで後半の" 狂気日食 "は、いわずと知れた" 狂気 "のラスト・ナンバー、
そしてエンディングにはストラヴィンスキーの" 火の鳥 "と思わしきフレーズと、ピンク・フロイドの
" 原子心母 "のフレーズが顔を出し" 狂気 "のトレード・マークとなった" 心音 "…ただし、ここでは
ティンパニによるもので幕を閉じる
なかなか憎い演出である