キャッチーでかつ攻撃的
Cheap Trickの4thスタジオ・アルバム" Dream Police "
当初は1979年春に発売される予定だったが、本国アメリカでは、そのころライヴ・アルバム" チープ・
トリック at 武道館 "が売れており、強豪を避けるために発売が延期された
" ニュー・ユア・ラヴ "は、前年のライヴですでに演奏されていた曲で、ライヴ・ヴァージョンが" チープ
トリック at 武道館 "で先行発売されていた
アルバムは全米6位に達し( チープ・トリックのスタジオ・アルバムとしては最高位 )、第1弾
シングル" ドリーム・ポリス "は全米26位、第2弾シングル" ヴォイシズ "は全米32位に達している
§ Recorded Music §
1 Dream Police - ドリーム・ポリス
2 Way of the World - ウェイ・オブ・ザ・ワールド
3 The House is Rockin' ( With Domestic Problems ) - ザ・ハウス・イズ・ロッキン
4 Gonna Raise Hell - ゴナ・レイズ・ヘル
5 I'll Be with You Tonight - アイル・ビー・ウィズ・ユー・トゥナイト
6 Voices - ヴォイシズ
7 Writing on the Wall - ライティン・オン・ザ・ウォール
8 I Know What I Want - アイ・ノウ・ホワット・アイ・ウォント
9 Need Your Love - ニード・ユア・ラヴ
§ Band Member §
Robin Zander - ロビン・サンダー( Vo,G )
Rick Nielsen - リック・ニールセン( G )
Tom Petersson - トム・ピーターソン( B )
Bun E. Carlos - バン・E・カルロス( Ds )
パワーポップ文脈での評価が一般的な彼らだが、ナックやカーズ、ブロンディなど3分間のシンプルな
ロックン・ロールの全盛の時代に、9分超えの" ゴナ・レイズ・ヘル "ではヘヴィなハード・ロック・
バンドとしてのアイデンティティをみせつけている
ヒット曲" ドリーム・ポリス "を始め、不朽のバラード" ヴォイシズ "など、楽曲、演奏、構成すべてに
おいてパーフェクトな彼らの最高傑作である
惜しむらくは、正当な評価を受けた最後のアルバムになってしまったこと
この後、彼らが繰り出すアルバムの数々は、一時期を除いてそれに見合うセールスをセールスを獲得
できなくなっていった
完成していながら1年間もの間、発表を見送られた作品でその経緯からもわかるように、まさに
絶頂期の作品といえよう
プロデュースは" 蒼ざめたハイウェイ " " 天国の罠 "に引き続いてトム・ワーマンが担当している
シンセサイザーの導入によりキラキラ度を増したサウンドを聴かせているが、ハードなギターに甘い
メロディという典型的なパワーポップに拍車がかかったような感じである
ストリングスやフランジャーによるジェット・サウンドを随所に盛り込み、ポップな楽曲をさらに印象的
にしており、メリハリの付いた印象も受ける
ちょうどパンク/ニュー・ウェイヴの末期あたりの作品だが、性急なビートを持ったギター・サウンドと
いう意味では共通するものの、その手の一連のグループとの類似性が感じられないのがある意味ですごい
パワー・ポップというと、今でこそどこにでもあるサウンドだが、パンク/ニュー・ウェイヴとは似て
非なる流れであったことを痛感させるアルバムだと思う
ローラーズの末期などもそのメイン・ストリームであったわけだが、どちらかというと世の流れとは
無縁だったわけで、パワー・ポップ系のグループとして、あの時代に大ヒットを繰り返していたことは
特筆に値すると思う
ただし単純明快なパワー・ポップのスタイルからも脱却し始めていて、オーケストラの導入や" ゴナ・
レイズ・ヘル "や" ニード・ユア・ラヴ "などの長尺曲、そして" ヴォイシズ "のバラードなど新しい展開も
随所にみえる
ゲストとしてヤイ・ワインディング(p,org)、クレジットにはないが" ヴォイシズ "にはスティーヴ・
ルカサーも参加している
次なる展開を模索した意欲的な作品であり、以降の作品同様文句のつけようのない内容だが、その意欲が
プロデューサーの変更や方向性の迷いなどに繋がり、結果として彼らは低迷期を迎えることとなるわけで
あるが、それは世間の注目がほかに移っただけのことであり、作品のクオリティは総じて高い
パワー・ポップの本流はチープ・トリックである