1980年リリースのハート通算5作目のスタジオ・アルバム
全米最高5位を記録したアルバム
1979年、メンバーも代わり新たなハートのスタートを切ったアルバムである
それ以前のメンバーでシングルがヒットした曲が多かったせいか忘れがちなアルバムだが、当時では
デビュー・アルバムの全米7位を上回る全米5位を記録し、それなりに( ハートでは当時で最高位 )
ヒットしたアルバムである
シングル・カットされた" ベベ・ル・ストレンジ "と" イヴン・イット・アップ "は、彼女たちが大好きな
レッド・ツェッペリンを意識したのか( しないのか )分からないが、シンプルで力強い曲になっている
アン・ウィルソンの歌い方も後期のような歌い方ではなく、まだロバート・プラント路線風な歌い方で
力強く、個人的には少しポップになってハートの一番売れているころも好きだが、このころのように
少しブルースっぽくロックの王道的な曲調も悪くはない
§ Recorded Music §
1 Bebe Le Strange - ベベ・ル・ストレンジ
2 Down on Me - ダウン・オン・ミー
3 Silver Wheels - シルヴァー・ホイールズ
4 Break - ブレイク
5 Rockin Heaven Down - ロッキン・ヘヴン・ダウン
6 Even it Up - イヴン・イット・アップ
7 Strange Night - ストレンジ・ナイト
8 Raised on You - レイズト・オン・ユー
9 Pilot - パイロット
10 Sweet Darlin - スウィート・ダーリン
§ Band Member §
Ann Wilson - アン・ウィルソン( Vo )
Nancy Wilson - ナンシー・ウィルソン( G,Vo )
Howard Leese - ハワード・リース( G,Key )
Steve Fossen - スティーヴ・フォッセン( B )
Michael Derosier - マイケル・デロージャー( Ds )
アルバムの" ベベ・ル・ストレンジ "は上述の2曲のシングル以外に、ブルース調の" ダウン・オン・
ミー "のような曲や、ナンシー・ウィルソンの弾くギターだけの" シルヴァー・ホイールズ "というインス
トゥルメンタルも聴きどころで、後半に登場する" ストレンジ・ナイト "もマイケル・デロージャーの
ドラムやハワード・リースのギターにアン・ウィルソンの艶のあるヴォーカルと絡みつくハートならでは
の曲に仕上がっている
さらに、この後の続く" レイズト・オン・ユー "では、ナンシー・ウィルソンがヴォーカルを務め、アン・
ウィルソンの力強いヴォーカルとは違うナンシーならではのソフトなヴォーカルを披露している
ナンシー・ウィルソンはドラム以外のすべてのパートをこの曲ではこなしていた
シングルがチャートを駆け上がったわけでもないのに、アルバムそのものが支持された
彼女らはヒット曲が先行してからアルバムが売れる傾向が続いていたので、やっとハート独自のユーザー
が生まれてきたのだと思う
" ベベ・ル・ストレンジ "からして" カシミール "のリフで頬が緩む…彼女らがやると嫌味がないというか
これがなければハートではない
曲によってサウンド・デザインは変わるが、ヘヴィ曲での低音部は凄まじく、例えば" ストレンジ・
ナイト "はツェッペリン・ファンが聴いていてもっとも落ち着く音作りになっている
アン・ウィルソンの声は高音が出すぎてしまって、たまに頭が痛くなることがあるが、この歌い方でいい
アルバムを締めくくるバラード" スウィート・ダーリン "は、ハートの得意なメロウな曲をしっとりと
歌い上げている
チャート成績は素晴らしかったものの、時代がまだ爆発的なバブル期に入る前だったせいか総売り上げは
プラチナ・レコードを得ることはなく、彼女たちのキャリアの中でもあまり目立たないアルバムになって
いる感がある
オリジナル・メンバーのロジャー・フィッシャーが脱退、5人編成となったハートはこれまでの
ツェッペリン魂を受け継ぎながら若干のサウンド変換も試みている
サウンド・プロダクションには当時のニュー・ウェーヴを意識したかのような軽さと華やかさがあるが
曲そのものは骨太なものばかりとなり、アン・ウィルソンのヴォーカルもしっかりロバート・プラント
してくれているのが目立っている
以降のポップ路線が信じられないくらい、ハートのメタリックなハード・ロッカーぶりが光っていた
とはいえ、70年代バンド最後のプライドが感じられる
" ベベ・ル・ストレンジ "は70年代ハートの集大成というか最高傑作の作品にあたると思う