プログレの中にアメリカン・ポップスの要素を持ち込み
グループの基本的なサウンドを確立させた記念碑的な作品
まだハード・ブギーの香りなどを濃厚に残しながら、プログレッシブ・ロック・バンドとしての
カンサスのスタイルを基本的に確立したといえるセカンド・アルバムで、彼らの代表作ともいうべき
タイトル曲" ソング・フォー・アメリカ "、めまぐるしい転調や変拍子をシンフォニックにまとめ上げる
手法がこの曲で完成をみている
当時のアメリカらしい前向きさにあふれた作風がいかにもカンサスらしく、しかも、ありがちな深刻
ぶった大仰なテーマや冗長な展開を排しながらも、壮大な世界を描き上げている
この後、3rdでの手探りを経てポップとの融合へと進化し、絶頂期を迎えていくわけだが、この曲には
すでにその片鱗が見えていて、今聴いても古さを感じさせない
スティーヴ・ウォルシュのヴォーカル…壮大なインストゥルメンツの上に彼のヴォーカルが乗らな
ければカンサスにならないことが、こうした初期の曲でもわかる
§ Recorded Music §
1 Down the Road - ダウン・ザ・ロード
2 Song for America - ソング・フォー・アメリカ
3 Lamplight Syimphony - ランプライト・シンフォニー
4 Lonely Street - ロンリー・ストリート
5 The Devil Game - 邪悪なゲーム
6 Incomudro-Hymn to the Atman - 宇宙への祈り
§ Band Member §
Phil Ehart - フィル・イハート( Ds )
Dave Hope - デイヴ・ホープ( B )
Kerry Livgren - ケリー・リヴグレン( G,Key )
Robby Steinhardt - ロビー・スタインハート( Vo,Vio )
Steve Walsh - スティーヴ・ウォルシュ( Vo,Key )
Richard Willams - リチャード・ウィリアムス( G )
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ジャケットのイメージとは裏腹に、内容そのものは実に充実したアルバムで初期のヒット曲" ソング・
フォー・アメリカ "のみならず、" ランプライト・シンフォニー " " 宇宙への祈り "の大作は隠れた名曲
かもしれない
抑揚を抑えたヴァイオリンの旋律のみならず、これと調和するキーボードの美しさは思わずキャメルの
" ムーンマッドネス "を思い出してしまう
初期の彼らが本国アメリカよりイギリスで受けが良かったというエピソードも頷くものがある
その後にブレイクする彼らの秘めたる才能が、雪に埋もれた新芽のように少しずつ頭をもたげる様が
このアルバムでは感じることができる
" 永遠の序曲 "から始まる黄金期の作品に比べてブギーからの影響が強くみられ、英国プログレ志向の
ケリー・リヴグレンの作品と、ハード・ロック志向のスティーヴ・ウォルシュが手掛けた作品の差は
大きい
もともとカンサスのメンバーであるフィル・イハートが1972年にイギリスに音楽留学に行き、全盛期の
ブリティッシュ・プログレッシブ・ロックに衝撃を受けたことがこのバンドの始まりともいえるのだが
彼らが自身のサウンドとしてプログレッシブ・ロックを確立したのがこのアルバムの名曲" ソング・
フォー・アメリカ "であろう
ロビー・スタインハートのヴァイオリンが実に効果的に散りばめられ、複雑なリズムの中をスティーヴ・
ウォルシュのヴォーカルが響き渡る
長い曲では特に顕著であるが、すべての曲で劇的な展開が繰り広げられる
複雑な曲構成の中に、アメリカの持つ大陸的な優しさが感じられ、メタリックな曲が1曲ある以外は
全編シンフォニックな仕上がりになっている
プロデューサーとしてジェフ・グリックスマンが初めて関わった作品であり、彼のプロデュースによって
後の" 永遠の序曲 "の大ヒットが生まれたことを考えると非常に重要な作品になると思う
" ダウン・ザ・ロード "はディープ・パープルを彷彿とさせるオルガン・ベースのハード・ロックに
なっており、そのヴァイオリンとギターの熱いソロの応酬に息をのむこと必至、" ソング・フォー・
アメリカ "は乾いた演奏で変則リズムを導入しつつ、憂いを帯びたヴァイオリンのメロディを聴かせ
ヴォーカルが入ると西海岸風の爽やかなハイ・トーン・ヴォーカルとコーラスを聴かせるなど、ドラマ
ティックな展開が素晴らしい
" ランプライト・シンフォニー "は映画の主題歌のようなドラマティックなバラードで、既に" パワー "
以降の香りもするが、後半は静と動のコントラストを見事にみせつけるスピード感あふれるインスト・
パートを聴かせている
カンサスはフォーストでほぼ実力を完全にみせつけていたが、本作ではさらに楽曲が充実していて
" 永遠の序曲 "だけが彼らの名盤ではないことがよく分かる