この力の抜けたサウンド、この素敵な詞
日本人であることをこれを聴くことによって誇りに思える
" ロック "が特別だったころの偉大なる実験作で、" ロック "が何よりも一番かっこよくて新しい音楽
だった時代、とにかく新しい音を求めて作られた前のめりな音楽を、ひとくくりに"ロック "とする
ような風潮があった時代の音楽
純粋に音楽としても、商業的な目的でも、いろいろな実験作が生まれては消えていった時代に、今では
考えられないような凄まじい組み合わせの4人が" 日本語でロックする "という実験を試みて、成功した
アルバムだと思う
ビートルズの" サージェント・ペパーズ "、フリートウッド・マックの" タスク "のようなアルバムである
日本の大衆音楽を語る上で、メインストリームではないかもしれないが、避けては通れない音楽である
1964年、東京オリンピック以降の開発・近代化で急激に失われてゆく" 古き良き日本・東京の姿 "を
" 風街 "という架空の街にみる、といったテーマがみてとれる
§ Recorded Music §
1 抱きしめたい
2 空いろのくれよん
3 風をあつめて
4 暗闇坂むささび変化
5 はいからはくち
6 はいから・びゅーちふる
7 夏なんです
8 花いちもんめ
9 あしたてんきになれ
10 颱風
11 春らんまん
12 愛餓を
§ Band Member §
細野 晴臣( Vo,B,G,Key )
大瀧 詠一( Vo,G )
松本 隆( Ds )
鈴木 茂( G,Vo )
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はっぴいえんどのセカンド・アルバムだが、ここですべてが完成している
もう1枚出しているがそれは契約上のもので、3枚のアルバムを発表した後、ロックへのオマージュを
完成させ解散、その中でも傑作の呼び声高いのがこの" 風街ろまん "である
ネプチューンの原田泰造そっくりな松本隆、日本の名ギタリスト鈴木茂、顔はともかく才能は止まらない
大瀧詠一、おじいさんがタイタニックの生き残りの細野晴臣、この4人の中で一番このアルバムに影響を
与えているのが細野晴臣だと思う
" 風をあつめて "、この歌が輝きを強く放っている
もともと" 手紙 "というタイトルであった曲の完成形のものだが、まさしく名曲である
細野晴臣自身はもっと高い声で歌いたかったらしいが、ジェイムス・テイラーを聴いて歌い方を変えた
ちなみに大瀧詠一は、遠藤賢司という人の歌い方にヒントを得ている
そう、とにかく" 風をあつめて "1曲だけでも十二分に聴く価値があるアルバムである
はっぴいえんどのオリジナル3作中の第2作で、大瀧詠一 7曲、細野晴臣 4曲、鈴木茂 1曲という構成だが
三人三様の持ち味が次第にみえてきた作品である
まず細野晴臣の2大傑作" 風をあつめて " " 夏なんです "、このアルバムの空気感は、この2曲による
ところが大きいのかもしれない
音楽の引き出しが多い人だが、この和風の味わいは独特で、録音技術の過渡期ながらギターの音質も
良好で、不思議と耳に残る響きである
鈴木茂は、本作で初めて歌を担当、" 花いちもんめ "1曲だけだが、これが完成度の高い佳曲で存在感が
充分に出ていて代表作のひとつといってもよく、構成がしっかりしていて聴き応えがあり、その後の彼の
個性が、すでに垣間見えるようでもある
さらに大瀧詠一の作品も好調、演奏もコーラスもまさにグループ総戦力の" はいからはくち "が圧巻だが
それ以上に特筆したいのが" 颱風 "、" 颱 "の字自体がただならぬ雰囲気を醸し出しているが、内容も
それに劣らぬ異様なテンションをみせていて、台風が来る前の不安とともに何故かワクワクするあの
感じが見事に表現された異色作である
こういうバンドの、こういうアルバムを聴いていると、やっぱり日本の音楽シーンっていうのは
消費されて忘れられていく一方の音楽なんだろうなぁと思ってしまう…もちろんそうでない音楽もあるが
いま巷にあふれている音楽に比べれば、地味な印象は拭えないんだが、何度も聴いてしまうし、何より
詞が語りかけてくる
声高に直球路線で愛を叫ぶ歌なんてなく、語られるのは淡々とした日々感じたことだったり、自分が
見える範囲の私的な世界観である
その詞がとても美しく、かつ彼らが生きた60年~70年代の光景が目に浮かぶようで、あぁ、日本って、
そして日本語ってこんなにキレイだったんだと感じることができる
曲調的にはフォーク調が多く、ほかにカントリー風、ブルース風、ロック風とさまざまだが、全体的に
春の晴れた日、田舎の家で窓全開で聴きたい…そんな感じで、とても落ち着く
歌詞も曲も聴き手に押し付けるところがない