世界に向けて先行発売されたマンティコア盤セカンド
Pate Sinfieldの" 仕事人 "としての詩人っぷりに敬服せざる得ない
プレミアータ・フォルネリア・マルコーニは1971年イエスやディープ・パープルのなどのイタリア公演で
前座を務めてイタリア観衆への認知度を高めていき、1972年3月、ルーチョ・バッティスティの
レーベルであるヌメロ・ウーノから、アルバム" 幻想物語 "でデビュー、イタリア国内チャートで最高
4位まで上昇し、さらに同年暮れにはセカンド・アルバム" 友よ "をリリースした
これと前後してEL&Pのイタリア公演の前座として出演し、それがきっかけとなってグレッグ・レイクに
注目されてイギリスに招かれ" 友よ "をベースとした英語詞主体のアルバム" 幻の映像 "を制作、1973年
3月にロンドンのABCフラム劇場でイギリスで初ステージを実現し、さらに8月のレディングのロック・
フェスティバルに出演、このステージが観衆から高い評価を得た
§ Recorded Music §
1 The Mountain - マウンテン
2 Just Look Away - 通りすぎる人々
3 The World Became the World - 甦る世界
4 Four Holes in the Ground - 原始への回帰
5 Is My Face on Straight - 困惑
6 Have Your Cake and Beat it - 望むものすべては得られない
§ Band Member §
Franco Mussida - フランコ・ムッシーダ( G,Vo )
Flavio Premoli - フラヴィオ・プレーモリ( Key,Vo )
Mauro Pagani - マウロ・パッカーニ( Vio,Flt )
Patrick Djvas - パトリック・ジヴァス( B,Vo )
Franz Di Cioccio - フランツ・ディ・チョッチョ( Ds )
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イタリア超絶技巧プログレッシブ・ロック・グループ、PFMのセカンド・アルバムで、本国イタリア盤を
合わせると通算4枚目のアルバム
PFMを語るとき" キング・クリムゾンの影響を受けた "と紹介されることが多いが、キング・クリムゾンの
ような沈鬱さはなく、幻想的かつ絵画的で奥行きと深みをもちながらイタリアン・バロッタを感じさせる
明るく爽やかな音作りであり、音楽表現から受ける印象はエルドンやアネクドンのほうがはるかに
キング・クリムゾンに近い
そういう意味で、あまりキング・クリムゾン的先入観にとらわれずに聴かれるのがよいと思う
本作を一言で言えばユーロ・ロックとプログレッシブ・ロックが高次元で統合された完成度の高い
アルバムということになる
" マウンテン "はクラシカルで荘厳な混声合唱から始まり、鋭いギターが走り出す…それがやがて
物柔らかな雄大な広がりへ、ロマンティックなギター旋律、舞い踊る妖精のようなフルート、シンセに
彩られた牧歌的な情景、しかし徐々にテンションを上げ、再びクラシカルなコーラス、鋭く疾走する
ロック、柔和パートが行き交うクラシカルで優美ながらもスリリングで非常に素晴らしい大作
" 通りすぎる人々 "は穏やかで柔和なフォーク調の曲、" 甦る世界 "は憂いのあるフォーク調の曲が
メロトロンなどとともに壮大に高揚し、果てない広がりをみせる
" 原始への回帰 "はノリがよく明るく祝祭的、次々と表情を変えていくので油断してると置いていかれるが
それでいて聴いていて疲れない優美な趣、名曲" 困惑 "は夢の中を漂うような響きから始まって軽快に
変転していく
" 望むものすべては得られない "はジャージーで緊張感に満ちたインストゥルメンタルとなっている
前作" 幻の映像 "で感じられた散漫さは感じられず、出すべき音をしっかりと把握し、それをトータルな
曲作りに生かした確固たる自信のようなものが感じられる
ムダな音は極力排除し出すべき音をしっかり出す、そういった音作りが楽曲の良さも相まって聴く者に
ストレートに訴えかける
ベーシストがパトリック・ジヴァスに変わったことによりリズム・セクションが強化されている
ことも見逃せない
個々の曲は、" 甦る世界 "は1stアルバム" 幻想物語 "の" 九月の情景 "を新たにレコーディングし直した
ものであるが、オリジナルのシンフォニックで凝ったアレンジは大幅に整理され、シンプルなアレンジに
なっている
PFMは、この後ヴォーカリストを新メンバーに加え、弱みであった歌唱面を強化させるが、ユーロ的
エッセンスは大幅に後退し、よりアメリカナイズされた方向にシフトチェンジしてしまう
そういう意味でもPFMの頂点を捉えたアルバムとしてユーロ・ロック・ファン、プログレ・ファンに
巾広くお勧めしたい傑作アルバムである