誰もが口ずさんだといわれるArt Blakeyの代表的名盤
ジャズの" 運命交響曲 "であり、ジャズを聴き始めた人にぜひ聴いてほしく、タイトル曲" モーニン "の
冒頭はジャズの中でも有名で、ファンキー・ジャズの要素が凝縮されている
さながらクラシックにおける" 運命交響曲 "の冒頭を連想させ、" 運命 "のあの冒頭を受け入れられない
人はクラシックのある部分を好きになれないのと同様、この" モーニン "の冒頭を受け入れなければ
ファンキーといわれる東海岸のジャズの多くに馴染めないと思う…そんな試金石となるアルバムである
このアルバムにはファンキー・ジャズの楽しさがあふれていて、思わず身体が刻む4ビート、音色の
煌めき、そんな格好良さと同時にブルーな感覚が全体に流れる
情感たっぷりで、アフリカから受け継いだソウルを感じられる
§ Recorded Music §
1 Moanin' - モーニン
2 Are You Real - アー・ユー・リアル
3 Along Came Betty - アロング・ケイム・ベティ
4 The Drum Thunder Suite - ドラム・サンダー組曲
5 Blues March - ブルース・マッチ
6 Come Rain or Come Shine - カム・レイン・オア・カム・シャイン
§ Personnel §
Art Blakey - アート・ブレイキー( Ds )
Lee Morgan - リー・モーガン( Tp )
Benny Golson - ベニー・ゴルソン( Sax )
Bobby Timmons - ボビー・ティモンズ( Pia )
Jymie Merritt - ジミー・メリット( B )
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かつて1950年代に隆盛を極めたハードバップ、その中でも特にブラック色の強いファンキー・ジャズと
いわれるもので、本作に収められた" モーニン "はマイルス・デイビスの" ラウンド・アバウト・
ミッドナイト "と並びファンキー・ジャズの代名詞ともいえるもので、この曲を知らなくともどこかで
耳にしている人も多いはずである
シンプルに楽しめるジャズなので、普段あまりジャズを聴かない人でも入りやすいアルバムである
決められたコード進行という制約の中で各々アドリブでソロをぶちかますことをモットーとしたハード
バップは、特にロックを主にして聴いていた人にとっては、まったく違和感なく受け入れることのできる
ジャズだと思うし、アート・ブレイキーの超ファンキーなドラミング・プレイを体験してほしい
タイトル曲の" モーニン "は、ゴスペルにおけるコール&レスポンスを大胆に取り入れたという点では
確かにファンキーではあるが、ダンサンブルとかアーシーとかいった音楽的側面よりも、当時の
公民権運動の勃興ともリンクした" 黒人文化礼賛 "ともいえる政治的、思想的側面が強いように思う
組曲という形式をとった" ドラム・サンダー組曲 "にも窺えるが、本作はそれまでのスポーティで
トリッキーなジャズ=ビ・バップとは明確に一線を引き、知的で洗練された芸術としてのジャズを
志向したゴルソン=ブレイキーによる挑戦であったと思われる
そしてそれが、素晴らしくポップでもある傑作として結実してしまったのが名盤の名盤たる所以だと思う
もはや語るところもないアンセム的な作品なので、個人的な嗜好は別として興味のある人は手にして
間違いないと言い切れるぐらいの1枚、ファンキーな中にも独自のゴージャス感を漂わせている空間に
響きを感じる刺激、各人のソロ・パートはどれも熱く魅力的だが、中でもやはりこの時分のリー・
モーガンは神がかっている…キレまくるトーンの脳髄は陶酔境だし、その得も言えないセンスには
腸をよじるたくなるような快感をくれる
誰でも一度は聴いたことがあるタイトル曲の" モーニン "、今ではジャズだけに限らず色んなジャンルで
カバーされる曲だが、やはり当たり前だがこの時代のこのテイクを超える演奏はないと思う