イギリスのジャズ・ロックの代表グループ
Colosseumの第2期作品
イギリスのジャズ・ロック・バンド、コロシアムの1970年作サード・アルバムで前作" ヴァレンタイン
組曲 "がバンドの代表作として名高いが、本作も引けを取らないばかりか演奏のテンションの高さに
関してはむしろ上回っている
ジョン・ハイズマンの激しいドラムに、クリス・ファーロウの歌声がかぶさり、吹き鳴らされるデイヴ・
グリーンスレイドのオルガン、吹き鳴らされるサックスなどが一体となった実に熱いプログレ・ジャズ・
ロックを繰り広げている
また楽曲におけるドラマティックな構築性はいかにも英国的な雰囲気を醸し出していて、単なる
ジャズ・ロックの枠を超え、ブリティッシュ・ロックとしての普遍的なスケール感も感じさせる
§ Recorded Music §
1 Three Score and Ten, Amen - スリー・スコア・アンド・テン、アーメン
2 Time Lament - タイム・ラメント
3 Take Me Back to Doomsday - テイク・ミー・バック・トゥ・ドゥームスディ
4 The Daughter of Time - ザ・ドーター・オブ・タイム
5 Theme for an Imaginary Western - テーマ・フォー・イマジナリー・ウェスタン
6 Bring Out Your Dead - ブリング・アウト・ユア・デッド
7 Downhill and Shadows - ダウンヒル・アンド・シャドウズ
8 The Time Machine - ザ・タイム・マシーン
§ Band Member §
Chris Farlowe - クリス・ファーロウ( Vo )
Dick Heckstall-Smith - ディック・ヘクストール=スミス( Sax )
Dave 'Clem' Clempson - デイヴ・クレムソン( G )
Dave Greenslade - デイヴ・グリーンスレイド( Key )
Mark Clarke - マーク・クラーク( B )
Jon Hiseman - ジョン・ハイズマン( Ds )
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まるで大海原を思わせる大胆で重厚、かつドラマティックな展開はほかのバンドの追従を許さず、
要するに彼らの音楽のダイナミズムはわけもなく感動的で、まさに1960年代の英国が生んだ屹立する
異貌の身体のようなバンドである
ジャズ、ロック、クラシック、ブルース、サイケデリック…さまざまな音楽の影響を受けつつも
しかもどれにもカテゴライズされない桁外れのスケールの音楽性と、強靭な剥き出しの演奏性と繊細かつ
しばしば疾走感を伴う流麗な自在性は、あのクリームと唯一比較して然るべき存在であったし、時代に
埋没しない名演だと思う
コロシアムはジャズ・ロックやプログレの愛好家の間では比較的無視されがちなグループだが、真っ当な
ブルース・ロック系のアルバムとして聴くと本当に充実していて、そんな中でも当時すでに多くの
ヒット曲を出していたベテラン・シンガーのクリス・ファーロウをヴォーカリストとして迎えた本作は
間違いなくあっと驚くアルバムであり、それに見合った内容を持っている
演奏が申し分ないのは当たり前だが、後にアトミック・ルースターやZEPのジミー・ペイジのソロでも
変わらぬ咽を聴かせたクリスのヴォーカルは素晴らしい
特にジャック・ブルースのファーストに収録されていた" イマジナリー・ウェスタン "のカバーは最強で
聴くたびに身震いが起きる
後にコロシアムの残党のデイヴ・クレムソン、デイヴ・グリーンスレイドらによってグリーンスレイド
なるバンドが結成され、そこでもこの曲はカバーされているが、当然この作品のテイクには敵わない
コロシアムは、なんともジャンル分けしにくい音楽でどんな人がユーザーなのかよくわからないグループ
であるが、英国ヘヴィ・ロック関係にはこのグループからの人脈が実に多く無視できない
ジョン・ハイズマンとジャック・ブルースとの親交が、このグループの基本になっているように思え、
ジャンルを横断する演奏家を集めてヘヴィ・ロックを演じるというクリームのコンセプトの発展形を
目指していたのではないかと、そのジャック・ブルースの曲" テーマ・フォー・イマジナリー・
ウェスタン "が収録されている作品である
ハイズマンとヘクストール=スミスがジャズとブルース、マーク・クラークとデイヴ・クレムスンは
ブルース、ハード・ロック、デイヴ・グリーンスレイドは英国トラッドや古楽、これがメンバー
それぞれの図式で、圧倒的な演奏力を持っている集団なのでときにはアドリブ合戦みたいになるが
このアルバムでは比較的かっちりしたアレンジで聴かせてくれる
それを時代劇風に歌い上げるのがクリス・ファーロウである