清涼感あるJoe Sampleの鍵盤さばきが冴える1978年作品
ジョー・サンプルはクルセイダーズで活動する一方、1970年以降はソロ・アルバムも精力的に発表
しているが、" 虹の楽園 "は1978年に録音した大ヒット・アルバムで、このアルバムの成功によって
ジョー・サンプルのソロ活動は弾みがついた
ジャズ・クルセイダーズからクルセイダーズにおけるサンプルは、テキサス・ファンクをベースにした
ファンキーなピアニストという印象が強かったが、本作ではそうしたイメージを一新する新しい感覚の
演奏を披露していて、何とも清々しくリリカルなピアノが特徴的である
クルセイダーズとはまた違うこの爽やかなテイストで多くのファンの支持を得た
ファンク色は隠し味に使い、叙情性を前面に打ち出したのが成功の要因で、曲はすべてオリジナル、
サンプルはもともとコンポーサーとして優秀だったが、その鮮やかな手腕をこのアルバムで強烈に
アピール、どの曲も美しくてチャーミング、抜群のメロディセンスとアコースティック・ピアノの
美しさに魅了される演奏である
§ Recorded Music §
1 Rainbow Seeker - 虹の楽園
2 In All My Wildest Dreams - 野生の夢
3 There Are Many Stops Along the Way - 道草
4 Melodies of Love - メロディズ・オブ・ラヴ
5 Fly with the Wings of Love - 飛翔
6 As Long As it Lasts - 愛は限りなく
7 Islands in the Rain - 雨の島影
8 Together We'll Find a Way - 旅立ち
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ラムゼイ・ルイスなどロック・フュージョン系でアコースティック・ピアノを前面に定位させたプレイ
スタイルはあったが、ジョー・サンプルはその筆頭株主として多くのリスナーの心をつかんだのでは
ないかとと思う…当然クルセイダーズとしての基盤なしに語ることは出来ないが…
ただし・クルセイダーズのファンク・ジャズ路線とは一線を画すリリカルでメロウなピアノ・スタイルは
時代が求めていたものだったような気もする
" メロディズ・オブ・ラヴ "が名曲とされ、たしかにこの旋律で涙を流した女性も多かったと聞いたものだ
感動的なメロディにストリングスが絡んでいる
" 虹の楽園 "は、アップ・テンポで弾むようなピアノのメロディをスティックス・フーパーのドラムが
効果的にサポートしている
ギター・ソロも骨太な音でジャズっぽいフレージングがよく、トランペットのソロが最後に盛り上げる
ジョー・サンプルのこのアルバムが発売された1978年頃は、音楽も拡散しクロスオーバーが俄に脚光を
浴び始まった頃で、ソフト&メロウが人気を博しグローバー・ワシントン・Jr.やジョージ・ベンソンらの
アルバムが記録的なヒットとなった
そしてクルセイダーズの名手、ジョー・サンプルもその流れに上手く乗ったひとりで、代表作である
このアルバムも、ツボを押さえたヒットの匂いプンプンの中身に仕上がっている
全体的に穏やかな楽曲が並び、当時の空気が手にとるようにわかる
売りに出た作風で実際に売れたアルバムなのだが、やはりこの天才のやることにぬかりはなく、各楽曲の
完成度は半端ではなく寸分のスキもない精密機械のような作曲とアレンジ能力は見事である
作風的に女性ウケするようなアルバムなのだが、このアレンジと演奏は、アンサンブルの勉強には最適と
いっていいほど完璧、非の打ち所がない完成された作品で当時のアマチュア・フュージョン・バンドで
このアルバムの楽曲をコピーしたバンドはゴマンといたと思われる
この時代にもまったく違和感なく何度聴いても飽きないほどの名曲そして名演奏、情景が浮かぶような
メロディと繊細かつパワフル、またときにファンキーでアコースティック・ピアノの持つ良さのすべてを
伝えてくれる名盤の称号が相応しいアルバムである
時代はソフト&メロウで、経済は右肩上がり、安心して恋をしていられた時代…雑誌は「 ポパイ 」に
「 ホットドッグプレス 」、学生たちは皆今の若者よりお洒落だった…今から思うと毎日がお祭りだった
気がついてみると格差社会、階層社会が巧妙に準備されていた
でも" メロディズ・オブ・ラヴ "を聴くと、哀しみや寂しささえ生活の中の美しいスパイスだったのが蘇る