" Watercolors "のタイトルどおり
水彩画のような透明感を持つ作品
パット・メセニーはこの1977年当時は、間違いなく新しい音楽の形であってフォーク、カントリー、
ポップの要素をジャズとブレンドし、フュージョンよりも穏やかで親密な空気を作った
彼の秀でたエレキ・ギターはコーラスのように、彼自身のアコースティックの6弦、ライル・メイズの
ピアノ、ダニー・ガットリーブの奥ゆかしいドラムによって作られたなめらかな質感がしばしば漂い
さらにエバーハルド・ウェーバーのエレキ、そしてアコースティックなベース・ラインがギターの
リードとともに聴ける
薄く、まるでパステルのようなパレットと霊妙な軽さがあり、特に" リヴァー・キー "はパット・メセニー
グループが後に出す音を示唆している
§ Recorded Music §
1 Watercolors - ウォーターカラーズ
2 Icefire - アイスファイアー
3 Oasis - オアシス
4 Lakes - レイクス
5 River Quay - リヴァー・キー
6 Suite:Ⅰ.Florida Greeting Song - 組曲:Ⅰ.フロリダ・グリーティング・ソング
7 Suite:Ⅱ.Legend of the Fountain - 組曲:Ⅱ.湖の伝説
8 Sea Song - 海のうた
§ Personnel §
Pat Metheny - パット・メセニー( G )
Lyle Mays - ライル・メイズ( Pia )
Eberhard Weber - エバーハルド・ウェーバー( B )
Danny Gottlieb - ダニー・ガットリーブ( Ds )
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パット・メセニーの第2作となる本アルバムでその後パット・メセニー・グループとして演奏活動する
ようになるライル・メイズが加わっている
クレジットにはライル・メイズはピアノとなっているが、" オアシス " " 海のうた "で人の声のように
聴こえる不思議な音空間を構成しているのはシンセサイザーである
" 想い出のサン・ロレンツォ "からライルのオーバーハイム、シンセサイザーがクレジットされパットも
その後さまざまな音にチャレンジしているが、本アルバムはその原点といえる
基本的には楽器のストレートな音を聴かせる作品となっている
アルバム・タイトルどおり、ほとんど" 水 "に関係する曲で占められていて統一感を醸し出している
" ウォーターカラーズ " " レイクス " " リヴァー・キー "では初期のPMGのパターンが早くも打ち出され
とても清々しい楽曲、" アイスファイアー "はパットの15弦ハープ・ギターの硬質感あるソロが氷に
反射する光を連想させ、" オアシス "は12弦ギターとハープ・ギターの幻想的な響きが砂漠の風景を
彷彿させ、組曲の前半は唯一" 水 "と関係しないタイトルの曲、エレキ・ギターとドラムだけでたたみ
かけるように演奏されるが決して聴きづらい曲ではなく、組曲の後半は12弦アコースティック・ギター
ソロで短いが美しい曲になっている
ラストの" 海のうた "は広大な海のイメージが目に浮かぶ
パット・メセニー単独よりもパット・メセニー + ライル・メイズの作り出すサウンドに魅了される
者としては実にかけがえのない作品である
2人が初めて共同作業で作り出した瑞々しい音、そこにECMのひんやりした空気感が漂い、彼の作品の
中でも屈指の寂寥感を湛えた響きとなっている
アルバム42分という長さも調度よく、1度再生したら一気に聴いてしまう至福のひとときを味わえる
グループ化前のタイトルで壮大さはないが、伸びやかなギターが存分楽しむことができ、パット・
メセニーのアルバムはいつもそうだがハズレの曲がないので、ファン以外の人にも安心して勧められる
アルバムを通して聴くと水にまつわるさまざまな情景が眼に浮かんできて、海や川を船で旅している
ような気分になるし、ジャケット写真のイメージと内容がとてもマッチしている