孤高の詩人Peter Hammill率いる英国プログレ史上の名バンド
最高傑作と評される1971年リリースの4thアルバム
一般的にヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター( 以下VDGG )の最高傑作とされるアルバムで、どこか
スペイシーなハモンドの音色にピーター・ハミルの個性的な歌声が響きわたり、不思議な壮大さが
広がってゆく
サックスも入ってジャズ・ロック的な要素もありながら、絡みつくような濃密さが音にあり、気持ち悪い
一歩手前という雰囲気が、つまりはとても個性的でもある
キング・クリムゾンにも匹敵する音の強度、アヴァンギャルドな感覚を有してたたみかけるこの質感は
後のイタリアのヘヴィ・プログレなどにも影響を及ぼしたと思われる
全3曲という大作志向のアルバムで、特に後半の23分の組曲が圧巻だ
§ Recorded Music §
1 Lemmings - レミングス
2 Man-Erg - マン・アーグ
3 A Plague of Lighthouse Keepers - ア・プラグ・オブ・ライトハウス・キーパーズ
a. Eyewithness - アイウィットネス
b. Pictures / Lighthouse - ピクチャーズ/ライトハウス
c. Eyewithness - アイウィットネス
d. S.H.M. - S.H.M.
e. Presence of the Night - プレゼンス・オブ・ザ・ナイト
f. Kosmos Tours - コスモス・ツアーズ
g. ( Custard's ) Last Stand - ラスト・スタンド
h. The Clot Thickens - ザ・クロット・ジッケンス
i. Land's End - ランズ・エンド
j. We Go Now - ウィ・ゴー・ナウ
§ Band Member §
Peter Hammill - ピーター・ハミル( Vo,G,Key )
David Jackson - デヴィッド・ジャクソン( Sax )
Hugh Banton - ヒュー・バントン( Key,B )
Guy Evans - ガイ・エヴァンス( Ds )
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高貴ながらもヒステリックの乱れ暴走するピーター・ハミルのヴォーカル、的確かつ興奮を煽るドラム
オルガンの生む深く荘厳な空間はときに地響きを立て揺らぎ、雷撃のように走るサックス、空間が捻じれ
歪み始める…切れたような凄まじい演奏に終始圧倒され、深く絶望的な闇が渦巻く
ロバート・フィリップもゲスト参加していて、とりあえず迷ったら本作からと言いたいが劇薬過ぎる
" レミングス "はどす黒い噴煙がものすごい速さで広がっていくような何とも恐ろしげな雰囲気が圧巻
スリリングに飛び交い奇怪に捻じれていくオルガンとサックス、次々表情を変えるヴォーカル、中盤は
大地を揺るがす地割れのような展開は極悪、フルートの揺れる謎めいた終幕もいい
" マン・アーグ "は教会風のオルガンやピアノ、清く切ない歌声が響く序盤だが、突如切れた演奏が火を
噴き心臓が止まりそうな強烈さである
高らかな歌声が響きわたるクライマックスには再び中盤の邪悪な演奏が割り込み、光と影が激しく
行き交うような展開は実にスリリングで、更にはその光と影はひとつになり重厚で開放的な大団円に至る
" ア・プラグ・オブ・ライトハウス・キーパーズ "は映画を一本通して観るくらいの手応えのある23分の
大作で、歌声、詞と見事にシンクロしてサウンドが映像やイメージを強烈に喚起、広大な海灯台、荒れ
狂う波、難破船の破片、亡霊…さまざまな光景が目に見える
灯台の光、近すぎる光、他者、自我、孤独、主人公のもがき苦しみ葛藤する姿がまざまざと浮かぶ
破壊的、狂気に満ち嵐のように押し寄せる第8部のあと、ひとつの悟りに至ったかのような第9部の
崇高に輝く歌声はあまりに感動的だ
LPのサイド2にすべてを覆い尽くした23分の一大音絵巻が素晴らしすぎで、およそ尋常じゃない歪な
時間と空間が堪能できる
どのジャンルの音楽でも体験できない快楽サウンドで、ピーター・ハミルも憑かれたように咆哮していて
聴く方まで嬉しくなってくる
プログレッシブ・ロックを超えた究極のプログレともいっていい至福の産物に仕上がっている
矢継ぎ早に繰り出されるエキセントリックなフレーズの数々にぜひ酩酊してほしい
本作発表後、VDGGはヨーロッパ・ツアーに出たが、あまりにも過酷だったためか、それが原因となって
2度目の解散となった