巨星 Jhon Coltraneは1967年7月17日、40歳の若さでこの世を旅立つ
本作は亡くなる数ヶ月前に録音されたラスト・アルバム
ジョン・コルトレーンは1967年7月17日未明、肝臓癌のため40歳の生涯に幕を閉じた
本作の録音は同年の2月と3月、コルトレーンが亡くなったあと真っ先に発売されたのが本作であり
ラスト・アルバムである
コルトレーンのバンドは、マッコイ・タイナーとエルヴィン・ジョーンズが去り、ピアノはアリス・
コルトレーン、ドラムはラシッド・アリ、そこにファラオ・サンダースが加わったクインテット編成
だったが、なぜか本作ではファラオの参加は" トゥ・ビー "のみで、その" トゥ・ビー "はコルトレーン
がフルートを、ファラオがピッコロを吹いている異色の演奏である
最晩年の録音だから猛烈に吹きまくっていると思いきや、これが意外なことに悟りの境地に到達したかの
ような内省的な演奏で驚かされる
§ Recorded Music §
1 Ogunde - オグンデ
2 To Be - トゥ・ビー
3 Offering - オファリング
4 Expression - エクスプレッション
§ Personnel §
Jhon Coltrane - ジョン・コルトレーン( Sax,Fl )
Pharoah Sanders - ファラオ・サンダース( Fl,Pic )
Alice Coltrane - アリス・コルトレーン( Pia )
Jimmy Garrison - ジミー・ギャリソン( B )
Rashied Ali - ラシッド・アリ( Ds )
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" オグンデ "が1967年3月7日、" トゥ・ビー " " オファリング "が1967年2月15日、" エクスプレッション "
が1967年春録音と、亡くなる直前の録音となっている
特徴的なのは、このアルバムで初めてコルトレーンがフルートを吹いていることで、エリック・
ドルフィー遺品のフルートと思われる
" トゥ・ビー "で聴けるこのフルートは、インドの北ベンガル地方の民謡をベースにしているそうで
ひたすら求道するコルトレーンの音楽はここに宗教のひとつとなった
ジョン・コルトレーンは一瞬一瞬の自分を否定し、次の自分へと前進し、その自分をまた否定し前進して
いった…これはコルトレーンの遺作ではあるが、一瞬のコルトレーンでもある
ジョン・コルトレーンが後期に傾倒したフリージャズにあって、比較的に制御、抑制された演奏で
リーディングのコルトレーンをほかのメンバーがサポートする形式の模様である
フリージャズというより、ソロによるインプロヴィゼーションといった感じで、涼やかに流れるピアノ
せせらぎのようなパーカッションをバックに、艷やかな管で各曲は始まり、強すぎるブローからの音割れ
した演奏に終止せず、静の面も併せ持つ内容となっている
アルバムの構成は起承転結といった風情で、調性の取れた美しい" オグンデ "を起点に、水墨画のような
" トゥ・ビー "を承け、艷やかなオープニングから始まる" オファリング "へと進み" エクスプレッション "
で結んでいる
" オファリング "のオープニングは" 至上の愛 "のオープニングと同じモチーフのようだが、彼の中では
神的な演奏に際しての詠唱なのかもしれない
1960年代のジャズ・シーンを過激に走り抜けたジョン・コルトレーンによる遺作がこのアルバムで
きわめて穏やかでスピリチュアルな演奏を聴かせ、彼の才能の粋を集めた形になっている
マイルス・デイビスのコンボから出発し、叙情あふれる世界、インドやアフリカのスピリチュアルな世界
そしてフリージャズの世界へと脱皮を続けてきたジョン・コルトレーン…これが最後かと思うと感慨深い
サックスにこだわらず、彼の心を歌うには楽器は二義的な意味しか持たなくなったということだろう
コルトレーンを初めて聴く人には向かないが、彼の軌跡を追い続けてきた人には欠かせないアルバム
である