日本の音楽シーンに衝撃と革命を巻き起こし
ひとつの流れを作り出した
もともとプレイヤーとしての腕もさることながら、最先端思考、前衛主義であった感度の高いメンバー
3人が、世界進出を目指しながらも下世話なまでに国内市場の一般大衆の感度まで意識、分析し
創り上げたのが、このイエロー・マジック・オーケストラ( YMO )の2ndである
その前衛性と大衆性という二律背反するニーズを同時に満たしつつ、世界中に数え切れないほどの
フォロワーを生むという偉業を成し遂げることに至ったのは、やはり彼らのミュージシャンとしての
力量もさることながら、目に見えないグローバル及び、自国内の時代の流れを見通す感受性、センスに
よるところが大きい
また、YMO自体が匿名性の高い企画ユニットとしてスタートしたため、各々が自分のソロとしての
キャリアを気にせず自由に遊べたというのも良い効果をもたらした
§ Recorded Music §
1 Technopolis - テクノポリス
2 Absolute Ego Dance - アブソリュート・エゴ・ダンス
3 Rydeen - 雷電/ライディーン
4 Castalia - キャスタリア
5 Behind the Musk - ビハインド・ザ・マスク
6 Day Tripper - ディ・トリッパー
7 Insomnia - インソムニア
8 Solid State Survivor - ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー
§ Band Member §
細野 晴臣( B )
高橋 幸宏( Ds,Vo )
坂本 龍一( Key,Syn )
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デビュー作でシンプルな理念を掲げ、閉塞感漂う野暮ったいフュージョンからの脱走を図ることに成功し
続く本作では、ジャパニーズのメンタリティを隠し持ちながら無国籍なポップネスを遺憾なく発揮し
ロック史上に残る作品に到達した
そのサウンド、遺伝子は、その後時を経てインダストリアルなテクノや、ハウス、エレクトロニック・
ダンス・ミュージック、その他に継承されていく
著しい使用機材のスペック向上、BPMの速度、トレンドからすればアナログでデジタル・ミュージック
に取り組み始めたばかりの彼らの音楽は、とっくの昔に古びていてもおかしくないはずだが、ビビットな
ジャケット同様、発売されてから45年経とうとする今でも色褪せることはない
当時、日本を侵食し、街中いたる所でかかりまくっていた" テクノポリス "と" ライディーン "は斬新
ながら、どこか懐かしさを感じられる近未来サウンドであった
" 万人に受け入れられるディスコ・サウンドを "を最初の目標と課していたYMOにとっては、成し遂げた
感はあったかもしれない
小学生から老人まで、日本国民中も巻き込んでしまった社会現象のようなYMO、上記2曲のスタジオ
テイクは、当時テクノ・ポップという括りでもてはやされた
アナログ・シンセの音やヴォコーダーといったウワモノ、意図的なわかりやすさ、アニメ・テイストの
効果音、構成が功を奏し狂騒的な近未来を演出しているが、サウンド自体は実は市場を見据え緻密に
練られていた
赤と黄色の補色で飾った大胆なジャケット、そして収録曲を聴くとあっという間にリリース当時の世界に
戻ってしまうような錯覚を覚える
ウォークマンやスターウォーズ、そしてカウンター・カルチャーとしてのテレビ・ゲーム、今に続く
いろんな文化の多くが、この作品とほぼ時を同じくしている
日本のアニメやゲームが世界を席巻する前段で、世界の中で日本文化のイメージを一番ドラスティックに
変えたのはおそらくYMOではないかと思う
そう考えると、今や世界のサブカルチャーとなった日本のアニメやゲームに世界の目を向けさせた
きっかけも、実はYMOだったのではという気もする
倍音や複雑な響きを伴わない輪郭のはっきりした音は、初めて聴く人にはテクノ・ポップというより
ゲーム音楽の感覚に近いかもしれない
しかし、当時新興勢力となりつつあったニューウェーブからの影響も大きく、そういう意味ではロック色
を強めた部分も認められる
エレクトリックな音楽の先駆者として、まだほとんど誰も訪れたことがなかった荒野を切り拓いた
彼らのスピリッツ、業績はやたら言われるテクノ・ポップというレッテルを剥がし、今また改めて
最大限に再評価されるべきだと思う