往年の名プレイヤーのテクニックがさりげなく
満喫できる大人のジャズ
サウンドの緊張と緩和のバランスが見事で、まさにフォープレイ初期の完成形アルバムといっていい
音色によっては所々やや古さを感じるものの、もはやこのサウンドはフュージョンなのかスムース・
ジャズなのかといった意味のない定義付けなどを必要としていない
彼らの生んだ音楽は、やがてジャンルを超えて世界中に広く浸透していったのだと改めて感じることが
できる
こうして今聴いても心地よく楽しめるサウンドがあるということこそが真実だと思うし、甘く流れる
ナイロン・ギターの音と美しいピアノの旋律、それを引き立てるドラムと、これぞフォープレイの
音って感じがする
§ Recorded Music §
1 Elixir - エリクシール
2 Dream Come True - ドリーム・カム・トゥルー
3 Play Lady Play - プレイ・レディ・プレイ
4 Why Can't it Wait Till Morning - ホワイ・キャント・イット・ウェイト・ティル・モーニング
5 Magic Carpet Ride - マジック・カーペット・ライド
6 Whisper in My Ear - ウィスパー・イン・マイ・イアー
7 Fannie Mae - ファニー・メイ
8 The Closer I Got to You - クローサー・アイ・ガット・トゥ・ユー
9 East 2 West - イースト・2・ウエスト
10 Licorice - リコリス
11 In My Corner - イン・マイ・コーナー
§ Personnel §
Bob James - ボブ・ジェームス( Pia,Key )
Lee Ritnour - リー・リトナー( G )
Nathan East - ネイザン・イースト( B )
Harvey Mason - ハーヴィー・メイソン( Ds )
§ Additional Musicians §
Phill Collins - フィル・コリンズ( Vo )
Patti Austin - パッティ・オースティン( Vo )
Peabo Bryson - ピーボ・ブライソン( Vo ) … etc
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" エリクシール "に関しては第一印象はおとなしい印象だったが、聴けば聴くほど奥が深くなっていくと
いうか引き込まれていく
注意深く聴けばいくらでも新しい発見と感動があるし、BGMとしても上質で気持ちよく、それでいて
リラックスできる空間を創造してくれる
1曲目からヒンヤリとひたすら癒やされるし、どの曲も聴きやすくてお勧めだが、なんといっても
" マジック・カーペット・ライド "が最高で、これまでのフォープレイの総決算といった感じで、途中で
曲調が変わったり、クールだが暑い演奏が繰り広げられたりして、聴くものを空高く舞い上げてくれる
後にリリースする" イエス・プリーズ "のように砕けた印象はあまりないが、ほかでは絶対に味わえない
良さがあり、3作目ながらやはりこれこそフォープレイの元祖という気がするし、何よりリー・リトナー
のギターの冴え、これが一番大きいと思う
どちらかというと正攻法のフュージョンというよりは、どこかモダン・ジャズ風で、大人のムード漂う
非常に渋い音楽に仕上がっている
また、個性際立つ両盤の2人のギタリスト、本当にどちらも甲乙つけがたいのも確かで、この作品は
リー・リトナーの実力が存分に味わえる唯一貴重な最終アルバムとなっている
一方、" イエス・プリーズ "のちょっぴり控え目なラリー・カールトンではあるけれど、ドッコイドッコイ
のいい勝負とみているので、聴き比べもまたひとつの楽しみ
各メンバーのセンス、テクニックとも最高レベルで、これだけに人材が集まると普通メンバー間の
バランスが取れずにうまく行かないものなのだが、このアルバムではそんな心配はまったくない
メンバー間での自己主張は消去して、ポップな音作りに職人たちが持てる力を結集した
そういったこともあり、フィル・コリンズの歌も納得の仕上がり、メンバー全員がひたすらエゴを抑えて
考えられうるポップな音像作りに的を絞り、見事にそれに成功した稀有な作品だ
ツワモノたちが集まり絶妙のさじ加減で作り上げた最高のコンビネーションといえる
聴いて損はない