センシティヴな大人のポップ・ロックを
展開させているアルバム" The Living Years "
前作のアルバムのヒットを受けてほぼ同じスタッフで制作されていて、今回も約半数の曲でマイク・
ラザフォードとクリストファー・ニールと共作、残りの曲をB.A.ロバートソンと共作している
本作は彼らの代表作として申し分ない仕上がりだが、その一番の理由は屈指の名曲ともいえるタイトル曲
" リヴィング・イヤーズ "が収録されていることに尽きる
意味深なプロモーション・ビデオも印象的だったが、後のジェネシスの" ノー・サン・オブ・マイン "
にも通じる現実的な歌詞は心を打つ
すべてにおいて完璧な仕上がりであるが、それに見合った全米1位という記録も見事に打ち立てている
§ Recorded Music §
1 Nobody's Perfect - ノーバディーズ・パーフェクト
2 The Living Years - リヴィング・イヤーズ
3 Seeing is Believin - 論より証拠
4 Nobody Knows - ノーバディー・ノウズ
5 Poor Boy Down - プア・ボーイ・ダウン
6 Blame - ブレイム
7 Don't - ドント
8 Black and Blue - ブラック・アンド・ブルー
9 Beautiful Day - ビューティフル・ディ
10 Why Me? - ホワイ・ミー?
§ Band Member §
Mike Rutherford - マイク・ラザフォード( G,B )
Paul Carrack - ポール・キャラック( Vo )
Paul Young - ポール・ヤング( Vo )
Peter Van Hooke - ピーター・ヴァン・フォーク( Ds )
Adrian Lee - エイドリアン・リー( Key )
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前作のヒットからくるプレッシャーも感じさせず、高品質な作品を発表するところにベテランの余裕を
感じるというか、前作にみられたどこかで聴いたことがあるようなメロディ曲がなくなり、全体的には
アルバム・ジャケットのイメージ通りのシリアスな仕上がりに圧倒された
ジェネシスに漂うフィル・コリンズのエンタメ性が希薄で、曲構成も当時最先端な硬質なもので、
80年代後半の作品としては渋い大人の音楽という仕上がりになっている
大ヒットした" リヴィング・イヤーズ "はツアー中に亡くなった父親に捧げたという曲で、ポール・
キャラックがヴォーカルをとり全米No.1ヒットを記録した
ほかにも歌詞に毛沢東やニクソンが出てきて当時の30代以降のアメリカ人の共感を誘う内容の
" 論より証拠 "、歌詞と曲が泣かせる" ノーバディー・ノウズ "、" don't say don't "という歌詞が
笑わせるが大人の男女の微妙な距離や関係を歌った" ドント "、映画のような戦争をテーマにした
" ホワイ・ミー? "、サラリーマン社会の苦悩のような" ノーバディーズ・パーフェクト " " ブレイム "
など捨て曲が見当たらない
キラー・カットはシングルにならなかった" ビューティフル・ディ "で、3rdシングルはこの曲かと思って
いたが、なぜか" 論より証拠 "だった
この3rdシングルの選考が悪すぎたように思えもったいない感じがした
マイク・アンド・ザ・メカニックスはジェネシスから派生しているバンドで、見事なアダルト・
コンテンポラリー路線+ソウルフルなヴォーカリストをはめ込む作戦であった
これが時代の波に乗りヒット、プロダクションはシンセサイザーをやや派手目に使用してアップ・
テンポをまとめる
マイク・ラザフォードの周到なマーケティング・バランス思考とバンド・メンバーのミュージシャン・
シップがうまくブレンドされた渋みと深みのある1枚となっている
ディジタル的で硬質なサウンドながらも、人間的で温かさを感じさせる雰囲気はアラン・パーソンズ
プロジェクトに近いものを感じさせる
ジェネシスのギタリストであるマイクは全米ツアー中に父親の訃報を受け取るが、ツアー中のため
しかもジェネシスは当時3人しかメンバーがいなかったこともあり、1人が途中で抜けることができなく
マイクは父親の葬儀には出席することができなかったという
ミュージシャンになることを大反対した父親とマイク・ラザフォードは大喧嘩をして長い間絶縁状態
だったようだ