休止宣言から約1年、KISSは地獄の淵から逞しくなって蘇り
ショッキングな万華鏡の世界に誘っていく
1978年、2度目の来日を果たしたキッスの口から意外な言葉が飛び出してきた
" 2年間の活動休止 "というショッキングな言葉だった
それまで順調な活動を続けてきたキッスだけに、なぜ活動休止をしなければならないのか考え込んだ
ファンも多かったと思うが、キッスはライヴ・アルバムを効果的にリリース
スケジュールに組み入れて、それなりのローテーションで動いているグループだった
デビューから" 地獄の狂獣 "までの2年間、さらに" 地獄の軍団 "から" アライヴⅡ "までの2年間という
具合に、正確なまでのローテーション・ワークによって支えられていることがよくわかる
つまり、キッスの突然の休止宣言はあらかじめ予定されていた行動だった
§ Recorded Music §
1 I Was Made for Lovin' You - ラヴィン・ユー・ベイビー
2 2,000 Man - トゥ・サウザンズ・マン
3 Sure Know Something - シュア・ノウ・サムシング
4 Dirty Livin' - ダーティ・リヴィン
5 Charisma - カリスマ
6 Magic Touch - マジック・タッチ
7 Hard Times - ハード・タイムス
8 X-Ray Eyes - エックス・レイ・アイズ
9 Save Your Love - セイヴ・ユア・ラヴ
§ Band Member §
Paul Stanley - ポール・スタンレー( G,Vo )
Gene Simmons - ジーン・シモンズ( B,Vo )
Ace Frehley - エース・フレーリー( G )
Peter Criss - ピーター・クリス( Ds )
久しぶりに沈黙を破ったキッスは、アルバム" 地獄からの脱出 "のリリース前にシングルを発表している
" ラヴィン・ユー・ベイビー "、この曲はディスコ・リズムのナンバーで、従来のキッス・サウンド
からは考えられない曲だった
キッスは常に新しい何かを求めていたし、それはファンが唖然とする斬新さにみなぎっていた
そして、アルバム" 地獄からの脱出 "のプロデュースを担当したのがヴィニ・ポンシア
彼のこのアルバムにおける役割は大きく、プロデューサーとしてだけでなく作曲者として3曲を
提供している
キッスがこれだけメンバー以外の者をフィーチャーしているのも非常に珍しかった
このアルバムの大きな特徴としていえるのは、4人のメンバーが曲を書き、そして均等にヴォーカルを
担当している
かつてエースやピーターがリード・ヴォーカルをとるというのは極端に少なかったし、これはキッスの
一大変化といえた
これはやはり4人がソロ・アルバムを発表し、その出来がかなり良かったことから、このアルバムの
ユニークな構成が出来上がったのだろう
" トゥ・サウザンズ・マン "は、往年のローリング・ストーンズのナンバーで" サタニック・マジェス
ティーズ "にテイクされていた曲である
エレクトリック・レディ・レコード・プラントでレコーディングされたこのアルバムは見る角度を
変えればこのようなこともいえる
メンバーが1人で歌詞、曲を手がけた曲以外は、すべての曲が各々ソロ・アルバム制作段階で出来ていた
曲で、その曲を各々が持ち寄り、さらに4人が1曲ずつ新たに書き下ろし、そしてこのアルバムが
制作された
1曲1曲の作曲者、作詞者を各々のソロ・アルバムと見比べてみるとこの解釈のつじつまは見事に合うの
だから不思議である
そういう意味でも、この" 地獄らの脱出 "は各々のソロ・アルバムからの移行作品だと考えられるのである
それは決して極論ではないと思う
全体的曲の流れは何となく以前と比べると単に激しいロックン・ロールを綴っていくというタイプから
曲を聴かせるという方向に向いてきている
それまで直球の一本槍だったピッチャーがスライダーやホークを身につけたような、実にバラエティに
富んだ変化が脈打っている…これがキッスが打ち出した新しいアプローチなんだと思った
常に物事を考えて、考え抜いて、それから行動に移してきたキッスである
約1年間あまりの休止期間に、この新たなるアプローチを考え出したのだろう