Carmine Appiceの音楽活動30週年を
記念して制作された" Guitar Zeus "
ヴァニラ・ファッジで一世を風靡した60年代後半から、本アルバムの主人公カーマイン・アピスは
常にロック・ドラミングというものは、どういったものなのか具現化し続けてきた
ヴァニラ・ファッジを皮切りにカクタス、BB&A、アストロポート、KGB、ロッド・スチュワート・
バンド、ロッカーズ、テッド・ニュージェント、DNA、オジー・オズボーン、キング・コブラそして
ブルー・マーダーとざっと思いつくだけでもこれだけのバンドもしくはプロジェクトと関わっていた
これらの中にはカーマインが自らバンドとしてリーダーシップを取っていたものと、単にそのバンドの
ドラマーとして参加したものまでさまざまではあるが、何れにしろほんの少章節叩いただけで彼であると
わかってしまうその個性的なドラミングは、どのプロジェクトにおいても音楽面でのイニシアティブを
握らずにはいられないといった感じである
そんなカーマインの活動30週年を記念して、彼と親交のあるギタリストたちが一堂に会し一大セッション
を繰り広げた歴史的なアルバムである
§ Recorded Music §
1 Dislocated - Paul Gilberd : ディスロケイディッド- ポール・ギルバート
2 This Time Around - Yngwie Malmsteen : ディス・タイム・アラウンド- イングヴェイ・マルムスティーン
3 Safe - Neal Schon : セイフ - ニール・ショーン
4 4 Miles High - Steve Morse : 4マイルズ・ハイ - スティーヴ・モーズ
5 So Long - Doug Aldrich : ソー・ロング- ダグ・アルドリッチ
6 Nobody Knew ( Black White House ) - Brian May : ノーバディ・ニュー - ブライアン・メイ
7 Guitar Zeus PartⅠ - Jennifer Batten : ギター・ゼウス パート1 - ジェニファー・バトン
8 Killing Time - Ty Tabor : キリング・タイム - タイ・テイバー
9 Where You Belong - Slash : ウェア・ユー・ビーロング- スラッシュ
10 Days Are Nights - Ted Nugent : ディ・アー・ナイツ - テッド・ニュージェント
11 Time to Set Alarms - Eliot Easton : タイム・トゥ・セット・アラーム - エリオット・イーストン
12 Under the Moon & Sun - Mick Mars : アンダー・ザ・ムーン - ミック・マーズ
13 Guitar Zeus PartⅡ - Leslie West : ギター・ゼウス パート2 - レスリー・ウェスト
オープニングの" ディスロケイディッド "で登場するMR.BIGのポール・ギルバートで、少し時代がかった
ジミ・ヘンドリックスを意識したようなプレイをしているが、フレーズ自体はポールそのものといった
感じ、続く" ディス・タイム・アラウンド "に参加しているのはイングヴェイ・マルムスティーン、この
演奏もレコーディングの合間を見て、彼のアルバムと同じマイアミのスタジオでレコーディングされてる
打って変わって、明るくビートルズのような曲調の" セイフ "ではジャーニー、バッド・イングリッシュ
この当時はアブラクサス・プールを率いて活動していた
アブラクサス・プールとは名前から想像できる通り、カルロス・サンタナ抜きのサンタナで、同名の
アルバムをレコーディングしたメンバーが再び集って活動していた
" 4マイルズ・ハイ "はレインボー再結成のために再びバンドを脱退したリッチー・ブラックモアに代わっ
てディープ・パープルのギタリストの座に輝いたスティーヴ・モーズがエネルギッシュなプレイを展開
している
スティーヴの持ち味である強力無比なピッキングがカーマインの強烈なビートと一体化するこの曲は
演奏面におけるアルバムのハイライトであるといえる
アルバムの中でもっとも印象深く残る曲が" ノーバディ・ニュー "でイコライザー処理したケリー・
キーリングの声が、ビートルズというかクィーンを彷彿させる
ここでギターを担当しているのがブライアン・メイで、まるで" シアー・ハート・アタック "時代のような
曲とブライアン・メイのプレイは、見事に70年代の" ハード・ロック黄金期 "を再現している
アルバムのタイトル・トラックとなっている" ギター・ゼウス "のパート1、ここでソロイストを務めて
いるのはマイケル・ジャクソンのツアー・バンドに参加、ソロ・アルバムもリリースしているジェニ
ファー・バトンで、短い登場ではあるが彼女の持ち味であるとてつもないタッピング・プレイが大々的に
フィーチャーされている
" ウェア・ユー・ビーロング "はケリー・キリングがプレイするピアノからのスタート曲で、一味変わった
演出がなされているが、ここでソロイストを務めるのはガンズ・アンド・ローゼスというか、この当時は
自らのバンド、スネイク・ピットを率いて活動していたスラッシュである
この曲も彼が参加することを前提に書かれたような感じがあり、とにかくガンズの香りが漂ってくる
アルバムの最後を飾るのは、タイトル・トラック" ギター・ゼウス "のパート2で、マウンテンやウェスト
ブルース・アンド・レイングなどで活躍したレスリー・ウェストが締めてくれる
このアルバムを通じて演奏していたのは、カーマイン(Ds)、トニー・フランクリン(B)、ケリー・キー
リング(Vo,G,key)で、ほとんどの楽曲がカーマインとケリーによって書かれており、トニー・フラン
クリンがほとんどプレイしている部分も含めてジョン・サイクス抜きのブルー・マーダーという、
うかがった見方もできなくないが、それぞれのソロイストを生かした曲を作りながらもアルバムとして
トータルな仕上がりをみせているのは、さすがにカーマインの長年の経験故といえる