宇宙の彼方まで響き渡る旋律の群れ
Phil Collinsが提示した世界には、明らかに音楽によるマジックが存在する
フィル・コリンズ、自ら主演した初の映画であり、同時にシングルで大ヒットを記録した" 恋は
ごきげん "や" ツー・ハーツ "を含めて3曲を自作自演、それにフォートップスの" ロコ・イン・アカ
プルコ "をプロデュースしたサウンド・トラックも話題を呼んだ" バスター "からは1年強、ジェネシスの
生んだモンスターというべき超ビック・セールス・アルバム" インヴィジブル・タッチ "から約3年半を
数え、しかもフィル自信の純然たるソロ・アルバムとしては" ノー・ジャケット・リクワイアド "から
約5年ぶりとなったこのアルバム" バット・シリアスリー "
まるで7つの顔を持つ男とも呼べるかのように、あるときは2枚目半でバッチリ決めてくれるヴォーカ
リスト、あるときはいくつものバンドでプレイをするドラマー・マン、さらにあるときは見事に音を
演出するプロデューサー、そしてまたあるときは素晴らしい演技を披露する俳優など、いかなる方法に
おいても文句なしに自ら個性をアピールするのがフィル・コリンズのスゴイところだ
どれをとってみても手抜きなどなしに自らの力を100%発揮する
§ Recorded Music §
1 Hang in Long Enough - ハング・イン・ロング・イナフ
2 That's Just the Way It is - 悲しみのザッツ・ザ・ウェイ
3 Do You Remember - ドゥ・ユーリメンバー
4 Something Happened on the Way to Heaven - ウェイ・トゥ・ヘヴン
5 Colours - カラーズ
6 I Wish It Would Rain Down - 雨にお願い
7 Another Day in Paradise - アナザー・ディ・イン・パラダイス
8 Heat on the Street - ヒート・オン・ザ・ストリート
9 All of My Life - オール・オブ・マイ・ライフ
10 Staurday Night and Sunday Morning - 土曜の夜と日曜の朝
11 Fother to Son - ファザー・トゥ・サン
12 Find a Way to My Heart - ウェイ・トゥ・マイ・ハート
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このアルバム発表当時のフィル・コリンズは世界一多忙で完全主義者の彼だからこそ作り得た申し分の
ない1枚で、5作目のソロ・アルバムだが限られた時間しかないという緊張感の中から生み出された
1つの" 宇宙 "のようなスケールを持っているということでは、これは明らかに" ノー・ジャケット・
リクワイアド "以来久々に体験できるジェネシスとも異なったフィル・コリンズならではの世界だと思う
" アナザー・ディ・イン・パラダイス "が第1弾シングルになった
まるで星を散りばめたような空間の中で、きらめきを持って歌う" アナザー・ディ・イン・パラダイス "
意外とも思えるあのクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの1人、デヴィッド・クロスビーとの
デュエットからなるこの究極のバラードを柱にして、フィル・コリンズはこのアルバムを宇宙まで響き
わたるような旋律にこだわりを持ちながら1つの世界を作り上げてしまった
フェニックス・ホーンズを大々的に導入したオープニングの" ハング・イン・ロング・イナフ "
あるいはモータウン系のビート感覚を取り入れた" ヒート・オン・ザ・ストリート "などに感じられる
ことだが、何よりもこのアルバムではバラード・タイプの曲に名曲と呼べるのが多いのが見逃せない
しかもそういった曲の数々では、必ずフィルを引き立てる名脇役まで存在する
例えば" アナザー・ディ・イン・パラダイス "のデヴィッド・クロスビーはもちろんのこと、クロスビーは
" 悲しみのザッツ・ザ・ウェイ "にも参加しているほか、" 雨にお願い "ではエリック・クラプトンが
ギターで、" オール・オブ・マイ・ライフ "ではスティーヴ・ウィンウッドがオルガンによりその役を
演じている
そのほかにも" 悲しみのザッツ・ザ・ウェイ "にはエリック・クラプトン・バンドのベーシストのネイザン
イースト、" 雨にお願い " " ドゥ・ユー・リメンバー "にはポール・ヤングなどのセッションで知られる
やはりベーシストのピノ・パラディーノ、それに" ドゥ・ユー・リメンバー "ではスティーヴ・ビショップ
のヴォーカルを聴くことができる
当時ジェネシスのメンバーであるマイク・ラザフォードはマイク&ザ・メカニクスを率いて活動を続行
トニー・バンクスも初の自己グループ、バンクステイメントでの活動に意欲を燃やしていた
そして、フィル・コリンズはこの" バッド・シリアスリー "をきっかけとした自らのソロ活動に全力を
注ぐ
このアルバムでも今までと同様に、フィルにはなくてならない存在であるダリル・ステューマーや
フェニックス・ホーンズを従えて、1990年2月からツアーが開始された
新たなフィル・コリンズの人間性と個性を映し出し、前にも増して多くの人たちを魅了するのがこの
" バッド・シリアスリー "にずらりと並んだ作品群であったことに間違いはない