Joe Satrianiの実験性が強く出た" Flying in a Blue Dream "
前作" サーフィング・ウィズ・ジ・エイリアン "はビルボード誌のアルバム・チャート最高29位まで上昇
インストのアルバムとしては1976年のジェフ・ベック" ブロウ・バイ・ブロウ "以来の快挙だったし
決定的に全世界で100万枚以上のセールスまで記録したし、当時もっともトレンディなギタリストだった
1988年は数多くのギター・マガジンの人気投票でもトップ・ギタリスト・オブ・ザ・イヤーにも選出
されている
しかし、日本におけるサトリアーニへの評価は意外と高くなかった、というより過小評価だった
日本デビュー作となった前作がオール・インストだったり、ミック・ジャガーの来日公演に参加したまで
はよかったが、単なるギターバカ的ニュアンスで捉えられている結果を招いていたのは事実であったし
前作のジャケットがサイバー・パンクというかアメコメ風のインベーダーというディジタルな感触だった
のも、マイナス・イメージだったのかもしれない
§ Recorded Music §
1 Flying in a Blue Dream - フライング・イン・ア・ブルー・ドリーム
2 The Mystical Potato Head Groove Thing - ザ・ミスティカル・ポテト・ヘッド・グルーヴ・スィング
3 Can't Slow Down - キャント・スロー・ダウン
4 Headless - ヘッドレス
5 Strange - ストレンジ
6 I Believe - アイ・ビリーヴ
7 One Big Rush - ワン・ビッグ・ラッシュ
8 Big Bad Moon - ビッグ・バッド・ムーン
9 The Feeling - ザ・フィーリング
10 The Phone Call - ザ・フォン・コール
11 Day at Beach ( New Rays from an Ancient Sun ) - ディ・アット・ビーチ
12 Back to Shalla-Bal - バック・トゥ・シャラ-バル
13 Ride - ライド
14 The Forgotten ( Part One ) - ザ・フォゴットゥン( パート1 )
15 The Forgotten ( Part Two ) - ザ・フォゴットゥン( パート2 )
16 The Bells of Laf ( Part One ) - ザ・ベルズ・オブ・ラル( パート1 )
17 The Bells of Laf ( Part Two ) - ザ・ベルズ・オブ・ラル( パート2 )
18 Into the Light - イントゥ・ザ・ライト
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通算3作目の" フライング・イン・ア・ブルー・ドリーム "は、前作同様サトリアーニ本人とジョン・
クニベリティの共同プロデュースで、全18曲65分にもおよぶ超大作となった
相変わらず自由奔放なインター・プレイは炸裂しているが、楽曲のバリエーションはかなり広がり
フュージョン風からパワー・メタル、エスニックな香りの曲まである
そしてそうなった要因としては、サトリアーニが初めてヴォーカルに挑戦したことが大きく影響している
どんなに多彩な音を奏で出したとしても、やはり単調な印象を与えてしまうだろうからだ
このアルバムでは6曲歌っているのだが、面白いことにギター同様ヴォーカルも1曲1曲印象がまったく
異なるカラフルな声である
上手下手は別にしてサトリアーニのヴォーカルは技が感じられ、まさしく90年代の到来に向けての新しい
ギタリスト像に一層厚みが増した感じがした
サトリアーニは、なぜ今回歌ったのか、何が契機だったのか
キーボードやシンセサイザーに途中まで走ってしまうギタリストには、どうしても失望の念を感じて
しまう…ジミー・ペイジ然り、ロバート・フィリップ然り、エディ・ヴァン・ヘイレン然り、何か自ら
ギターの表現力の限界を宣言しているというか、白旗を上げているようで納得がいかず、それよりも
歌ったりパーマネント・バンドに在籍している者ならソロでインストに挑戦してみたりと、ギターを放棄
してしまうのではなく、そのままの姿勢でさまざまな状況に自らをおいて試行錯誤を繰り返す人の方に
やたらシンパシーを覚えた
サトリアーニの場合は、従来のソロ・インストの枠を超えて逆にバンド・サウンドに向かってみた的な
意味合いのものではないかと思う
ヴォーカルの相対した場合に発揮されるギターの可能性みたいな、彼のヴォーカルはバンド・サウンド
への挑戦行為なのであった
とはいえ、彼にもパーマネントなバンド経験は過去に幾度かある
1979年から5年間、プロ・デビューを目指したパワー・ポップ・トリオ、ザ・スクエアーズ、85年には
ソロ活動と並行して、グレッグ・キーン・バンドにも在籍していたという意外な事実もある
例のミック・ジャガー・バンドへの参加も、バック・サウンドを体験するには絶好の機会だったろうし
今回のヴォーカル初体験のひとつの契機だったことは想像に難しくない
ジョー・サトリアーニにとって今回のバンド・サウンド指向は、ある意味で原点回帰のアプローチで
" 偉大なるアルタード・ステーツ " " 掟破りの逆進化論 "であった
こうした新方法論によって、このアルバムはロック色が強くなり、ジョー・サトリアーニがその深遠なる
資質を発揮するのはこれからだった