イギリス、ヨーロッパのみならずアメリカでも人気を博していた
Porcupine Treeの全貌が日本で初めて明らかになった作品
1987年にNo-Manのスティーヴン・ウィルソンのソロ・プロジェクトとして始まり1991年にデビュー、
1993年に元ジャパンのリチャード・バルビエリらを迎えてバンド名義となった
サウンド的には初期のピンク・フロイドのサイケデリック的な作風に近いとされるが、トランスや
アンビエイトといったプログレ以降のサウンドと、硬質なギター・サウンドや多彩なリズム解釈といった
モダンなロックのアプローチを融和させた独特の音楽性を志向していて、1990年代に勃興した新しい
プログレッシブ・ロックの担い手として活躍していた
ギター・ヴォーカルのスティーヴン・ウィルソンの作り出すサウンドは、ドリーム・シアター、" 狂気 "
以降のピンク・フロイドを彷彿とさせるものがあるが、プログレ特有の超越技工ソロがなく陰鬱で
ストレートな曲構成はアルタナティブ・ロック系に近い感じもする
§ Recorded Music §
1 Deadwing - デッドウィング
2 Shallow - シャロウ
3 Lazarus - ラザルス
4 Halo - ヘイロー
5 Arriving Somewhere But Not Here - アライヴィング・サムホエア・バット・ノット・ヒア
6 Mellotron Scratch - メロトロン・スクラッチ
7 Open Car - オープン・カー
8 The Start of Something Beatiful - ザ・スタート・オブ・サムシング・ビューティフル
9 Grass Arm Shattering - グラス・アーム・シャッタリング
§ Band Member §
Steven Wilson - スティーヴン・ウィルソン( Vo,G,Key )
Richard Barbieri - リチャード・バルビエリ( Key )
Colin Edwin - コリン・エドウィン( B )
Gavin Harrison - ギャヴィン・ハリソン( Ds )
キング・クリムゾンのロバート・フィリップが絶賛したバンドの日本メジャー作であり会心の一石となる
英国プログレッシブ・ロックの作品
彼らの随一の個性は、プログレッシブ・ロックの基準のそれとは似て明らかに異なるセンスを叩き出して
いる点だが、その感性はサイケな白黒を帯びたモノトーンさのそれが漂った世界観となっていてヘヴィな
ギター・グルーヴの絡みこそ現代的なヘヴィ・ロックを強調させるが、それを大胆に生かした優雅な
ピアノ、レトロ感のあるシンセを効果的にのせシリアスで憂鬱にあってもダイナミックなロック色を
吐き出し" 静と動 "のコンストラストに彩られ見事なまでに陰な美しさを奏でている
あまりスルメっぽさを感じることはなくグルーヴィでハードなロック" シャロウ "や美しいピアノが響く
バラード曲の" ラザルス "もよいが、置いてきぼりにさせられる孤独な感覚を同時に味あわせるのも、
プログレのアーティスティック性としての芸術をみせつける前述の構成が詰まった大作曲" デッド
ウィング "や" アライヴィング~ "などにこそ彼らの真価がハッキリと伝わり、その静動の対比感は神憑り
ともいえる領域に近い
緩急によりけりだが甘すぎることなく、かといって難解すぎることもない程度に固められたテクニックも
充分備わっている
モダンなプログレッシブ・ロックというところで一際放つ凄いアルバムだ
ポーキュパイン・ツリーのメジャー2作目、2005年作通算では9作目となる今作は基本的にメジャー・
デビュー作の前作の延長線上で、緩やかに静寂感を伴ったマイルドだがクールなサウンド
ときおり現れるメタリックなギターがいいアクセントになっていて、やはりメロトロンの使用やヴォー
カル・ハーモニーの美しさが魅力になっている
9分の大作から始まるので、前作よりもプログレ的な雰囲気が強く感じる
根底にあるメランコリックな軽い鬱的な部分が、浮遊感となって音に漂っていて、現代的なダークな部分
を感じることができる
決して爽やかな音ではないが、身を任せるに心地よい空間を構築しているのは確か
しっとりとしたピアノが美しいバラードや、メロトロンの鳴り渡るシンフォニックなアレンジも聴き
どころで、前作よりもやや音に温かみがあるところが英国らしい
当時、彼らの総キャリアは19年目に達していて、その音はすでに現代プログレの重鎮としての貫禄すら
漂わせていた
アルバム全体の構成も素晴らしく、飽きることなく最後まで聴くことができる
彼らのサウンドを評価するときによくいわれるのは、90'sピンク・フロイドだが、彼ら自身はそういった
固定観念に囚われることなを嫌い、貪欲なまでにすべてのジャンルを取り込んでいる
彼らを規定することは非常に難しくサイケ、プログレ、ヘヴィ・ロック、テクニカル・メタルいかように
も解釈でき、かつそのどれにも属していない
重厚で激しいサウンドの中にメロディアスで繊細な部分を併せ持つ
演奏だけで聴かせるのではなく、歌だけで聴かせるでもない…この最高に格好いい独自のサウンドは
彼らにしか出すことはできないし、彼らの真似をしようとしてもそれは失敗の終わるだろう
このアルバムは非常に聴きやすく、特にハード・ロック・ファンたメロディック・メタル・ファンは
違和感なく受け入れることができるだろう