あの" The Dark Side of the Moon( 狂気 )"から2年半
Pink Floyd Soundの安定を達成した名盤
一見ラフに聴こえるし、また" 狂気 "以前の彼らの音楽的なものを感じるが、本作" 炎 "は" 狂気 "以前が
感性の鋭さを叙情性で流していたのに比べると、ひと回り大きくなった感情豊かな優しさみたいなものを
感じることができる
そういう意味では、ブリティッシュの側からのレイド・バックのようなことも言え、それもただ身体を
休めるといった肉体的なものではなく、精神的というか神経的なレイド・バックのようなもので、心と
頭をもう一度振り返ってみるという意味で、それで彼らの側からすると、ピンク・フロイドが演って
いるからというのではなく、もっとシンプルにストレートに物事を受け止めて欲しかったって気がする
§ Recorded Music §
1 Shine on You Crazy Diamond PartⅠ~PartⅤ - 狂ったダイアモンド( 第1部 )
2 Welcome to the Machine - ようこそマシーンへ
3 Hava a Cigar - 葉巻はいかが
4 Wish You Were Here - あなたがここにいてほしい
5 Shine on You Crazy Diamond PartⅥ~PartⅨ - 狂ったダイアモンド( 第2部 )
§ Band Member §
David Gilmour - デヴィッド・ギルモア( G )
Roger Waters - ロジャー・ウォーターズ( B )
Nick Mason - ニック・メイスン( Ds )
Richard Wright - リチャード・ライト( Key )
-- Guests --
Dick Parry - ディック・パリー( Sax )
Roy Harper - ロイ・ハーパー( Vo )
Venetta Fields - ヴェネッタ・フィールズ( Bvo )
Carlena Williiams - カレーナ・ウィリアムズ( Bvo )
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アルバムのA面B面に収められた" 狂ったダイアモンド "はシド・バレットに捧げられた曲であるという
ことと、" あなたがここにいてほしい "という曲に関してはピンク・フロイド側から特に「 あなたが
ここにいてほしい 」という邦題を指定してということなどがひとつのポイントになっている
それからこのアルバムのテーマに" 火・水・砂・空気 "というの挙げられて、これについは、ピンク・
フロイドお得意の魔術の小道具といったところである
前作が前作だけに、期待が大きすぎたせいもあるかもしれないが、彼らは" 狂気 "のベクトルで突き進まず
に、ちょっと立ち止まったという感じを受ける
" 狂気 "というアルバムがかなり明確に人間の置かれている精神的な状況を現し過ぎたので、ここは
ちょっと" 立ち止まって見回す "といったところであった
" 狂気 "がある意味でかなり啓蒙的な受け取られ方をしたんで、それに対するミュージシャンとしての辛さ
みたいなものがあったと思う
だから、" 今度のアルバムは前作に比べるとちょっと… "と考えている人がいるとすれば、それは
ピンク・フロイドの側からすると、その人自身の意識だとか自主性みたいなものが重要なのに、自分以外
のもの、つまりピンク・フロイドがどこでも扉を開いてくれると考えていたんだと思う
だから彼らとしてみれば、" 此処にいて考えて扉を開けるのは君だよ "ということをはっきり言いたかった
のではないかと思うし、それがプログレッシブ・ロックの歩むべき道だったし、ピンク・フロイドは
自らの音楽をやり続けながらもプログレッシブ・ロックの何たるかを聴く側に教えてくれているような
気がした
ピンク・フロイドがあまりにもビッグ・グループであって、大きな責任を背負わされているプログレを
代表するグループであることが彼らとしては非常に重みだったと思う
結局彼らにしてみれば、プログレッシブというのがシンセサイザーやメロトロンなんかの電子楽器を
使って演る音の遊びじゃないんだということを、このアルバムのシンプルな音作りでいっている
電子楽器をたくさん使って複雑に絡み合わせて、ひとつの感性部分、イメージを抽象化したものを
そこに展開するということだけがプログレッシブ・ロックなのかという痛烈なアンチテーゼだと思う
頭からメッセージがどうのこうのと考えるじゃなしに、フワッとした気持ちでいい状態に音楽が自分を
持っていったときに何かボンヤリとで感じてほしいというような感じがする