現代のPink FloydともいわれているPorcupine Treeの8作目
前作" デッドウィング "で日本デビューを飾ったポーキュパイン・ツリーの通算14作目
メディア、ドラッグ、ゲームに溺れる引き篭もり少年をテーマにしたバンド初のトータル・コンセプト・
アルバムで、前作でのキャッチーさは後退して幾分地味な印象はあるものの独特の世界に引きずり込む
手腕はさすが、噛めば噛むほど味が出てくる
メタル的なダイナミズムと叙情的なメロディでうまく緩急をつける構成力はキング・クリムゾンの
ロバート・フィリップが憧れるのも頷ける
( ゲストとして参加、ラッシュのアレックス・ライフソンやデイヴ・スチュアートも参加 )
18分近い大作" アネステタイズ "がハイライトで、前作の" アライヴィング・サムホエア・バット・
ノット・ヒア "とともに近代プログレ大作の名曲となっている
§ Recorded Music §
1 Fear of a Blank Planet - フィアー・オブ・ア・ブランク・プラネット
2 My Ashes - マイ・アッシェズ
3 Anesthetize - アネステタイズ( 麻酔 )
4 Sentimental - センチメンタル
5 Way Out of Here - ウェイ・アウト・オブ・ヒア
6 Sleep Together - スリープ・トゥゲザー
§ Band Member §
Steven Wilson - スティーヴン・ウィルソン( Vo,G,Key )
Richard Barbieri - リチャード・バルビエリ( Key )
Colin Edwin - コリン・エドウィン( B )
Gavin Harrison - ギャヴィン・ハリソン( Ds )
前作ほど音圧は感じないものの、その暗鬱さは格段にレベル・アップしていることが感じられる
ポップとはいい難い楽曲ばかりだが、初期ピンク・フロイドの持っていた斜めに構えた感覚を受け継いで
いる、そんな感じがした
入り口としては前作の" デッドウィング "からが妥当だろうが、暗鬱音楽の愛でる方々は是非こちらの
アルバムをチェックしてみるといい
" デッドウィング "がもっとも人気だろうが、このアルバムにはそのような鋭さはなく暗鬱な雰囲気が
最後まで漂い続ける
とはいえ、そこまで暗鬱ではなくキング・クリムゾン、アネクドテンに比べれば彼らの個性である
キャッチーなメロディは随所に垣間みることができる
曲の展開、コード進行、拍子、それらを奏でる真の美しさ、格好の良さを体感できる
" テクニカルなブルースがなくて退屈だ "という意見を一笑に伏してしまうほどのクオリティがここにある
メロトロン音色を始めしっとりとしたシンセ・ワークと緩やかなヴォーカルが繊細に響きわたる
前2作にあった叙情メロディとメタリックな展開美は、本作では長い曲の中でやや影をひそめ、有り体に
いって聴き込まないと良さがわからないというものになっている
このような完全な非商業音楽がここまで売れたというのも、よく考えれば恐るべき自体だし、こういう
音楽を欲している人が多いのであれば、この世界は相当ヤバイのではとすら思う
もちろん" ウェイ・アウト・オブ・ヒア "あたりは普通に美しいと思うし、全体的に嫌いではないのだが
前作のように人に勧められるハッキリとした完成度から、さらに深みに入っている音なので用心を…
アメリカン・ロック・ファンにとっては充分納得いく出来栄えで、個人的にはタイトル曲でのヴォーカル
パートをもう少しメロディアスに仕上げてもらいたかった
いい意味での" ヲタク "ではなく、悪い意味での" ヒキコモリ "をテーマにしたコンセプト・アルバム
このバンド、プログレッシブ・ロックの緻密で難解な音や歌詞世界を持つ一方で、アンビエイトから
ハード・ロックまで巾広い音をカバーでき、かつメロディもそこそこ良いので聴き込んで唸らされる
こともあれば、BGMとしてサラッと聴き流すのにも適していて重宝できる
本作も17分を超える" アネステタイズ "を中心に全6曲でまとめてあって巾広いリスナーに満足して
もらえると思う
その" フィアーオブ・ア・ブランク・プラネット "だが、全体に緊張感がほとばしるというより、徐々に
盛り上がっていく感じ、開放的な曲だ
ちなみにラッシュのアレックス・ライフソンがゲストでソロを弾いている