互いにアイディアのやり取りを行っていたDavid Sylvianと
Robert Frippが満を持して制作したデュオ・アルバム
英国出身のロック・バンド、元ジャパンのデヴィッド・シルヴィアンとキング・クリムゾンのリーダー
ロバート・フリップの1993年発表のコラボレート作品で、ほかに当時キング・クリムゾン加入が噂された
ドラマー、ジェリー・マロッタや本作では作曲にも大きく貢献しているベーシストのトレイ・ガン
なども参加している
キング・クリムゾンらしいヘヴィなサウンドも聴かれるが、それ以上にフィーチャーされている浮遊感の
あるロバート・フリップらしいギター・ワークは、自身のソロ・プロジェクトを想起させ、そこに
ブルージーな味もあるデヴィッド・シルヴィアンの個性的なヴォーカルが良く映えている
変なライバル意識や競争心、気負いのまったくない互いの持ち味を理解し合い楽しんでひとつの作品に
まとめ上げたのがよく現れている健全なコラボレート作品である
§ Recorded Music §
1 God's Monkey - ゴッズ・モンキー
2 Jean the Birdman - ジーン・ザ・バードマン
3 Firepower - ファイアーパワー
4 Brightness Falls - ブライトネス・フォールズ
5 20th Century Dreaming ( A Shaman's Song ) - 20th・センチュリー・ドリーミング( シャーマンズ・ソング )
6 Darshan ( The Road to Graceland ) - ダーシャン( ザ・ロード・トゥ・グレイスランド )
7 Bringing Down the Light - ブリンギング・ダウン・ザ・ライト
§ Personnel §
David Sylvian - デヴィッド・シルヴィアン( Vo,G,Key )
Robert Fripp - ロバート・フリップ( G )
Trey Gunn - トレイ・ガン( Chapman Stick,Vo )
Jerry Marotta - ジェリー・マロッタ( Ds )
Marc Anderson - マーク・アンダーソン( Per )
Ingrid Chavez - イングリッド・シャヴェイズ( Vo )
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再結成直前だったクリムゾンのメンバーとしてフリップが考えていたメンツを結集したアルバムで
驚くべきことにシルヴィアンもヴォーカリストとしてクリムゾンに誘われていたが、フリップのワンマン
バンドの色彩が濃いクリムゾンの一員としてではなく、あくまで対等の立場で競演したかった
シルヴィアンが固辞し、結果このような並列名義の作品を残すことになった
結局ベースのトレイ・ガンだけがクリムソンに参加し、ドラムのジェリー・マロッタとシルヴィアンは
参加しなかった
ソロ作ではとにかく内省的な音を追求しているシルヴィアンだが、本作ではクリムゾン的なバカテク
知性派ロックの上にジャパン時代を彷彿させるロック・ヴォーカルを展開している
この頃のロバート・フリップは、かなりハードな志向が強くどうやってデヴィッド・シルヴィアンが
絡むのかと思ったが、さすがに才能があって且つ音楽に真摯な人の作品…良くできている
かなり轟音な音響波に低温で湿気たっぷりなヴォーカルは、明るく健康的とはいえないが、妙にドヤ顔の
シルヴィアンのジャケットにも納得できるし手応えがあったんだと思う
ジャケットも含めてプロデューサーのデヴィッド・ボトリルの力も大きく、この人は本作で業界デビュー
その後、キング・クリムゾンやデヴィッド・シルヴィアンにピーター・ガブリエル、ジョニ・ミッチェル
ドリーム・シアターなどの作品に関わっていて、なるほどという流れである
とにかく驚くのはシルヴィアンが一歩も引いてないということで、" ディシプリン "以降のクリムゾン・
メタルにシルヴィアンのアンビエイトなサウンドとヴォーカルが拮抗し、ちょいちょい入るプリパトロ
ニクスにもまったく動じず我が道を行く姿は神々しく、聴きやすくポップでフリップに主導権を
渡さなかった
ディジタル・ビートにクリムゾン轟音アンサンブルを乗せたりするアプローチや、彼らしくセンチ
メンタルなミニマルサウンドにフリップを取り込んだりと、フリップにとっても新しいアプローチ満載の
楽しい作品に仕上がっている
ここでのシルヴィアンがソロより魅力的といっては、デヴィッド・シルヴィアン・ファンに叱られるが
楽曲構成、ガチンコプログレを聴いている人にとっては、こっちのシルヴィアンのほうが魅力的である