" 白い暴動を起こそうぜ!立ち上がれ! "とメッセージを
歌いながらイギリスから登場したThe Clashのデビュー作
1976年~77年ごろというと、イーグルスが虚しさにあふれた" ホテル・カリフォルニア "、スティーリー
ダンがAORの名盤" 彩 "を発表するなどロックがよりポップに、あるいはディープになった時期である
そんな中、ロックの原点ともいえるシンプルで攻撃的なパンクのサウンドが、当時の若者に圧倒的に
支持されたのも納得できる
音はシンプル極まりないもの、凝ったサウンド的演出はまったくせず、ただ激しいビートに乗せて
毒を吐く…曲自体もカバー曲" ポリスとコソ泥 "以外はどれも3分未満のものばかりで、全体収録時間も
35分ほど、ギター兼ヴォーカルのジョー・ストラマーが" 俺たちもデビューしたいが、まだ練習中だ "と
ラモーンズのジョーイ・ラモーンに語った際、ジョーイが" 上手くなるまで待ってたら年寄りに
なっちまうぜ "とアドバイスしたとか…確かにその言葉通り決してテクニカルとはいえないサウンドだ
§ Recorded Music §
1 Clash City Rockers - クラッシュ・シティ・ロッカーズ
2 I'm So Bored with the USA - 反アメリカ
3 Remote Control - リモート・コントロール
4 Complete Control - コンプリート・コントロール
5 White Riot - 白い暴動
6 ( White Man ) In Hammersmith Palais - ハマースミス宮殿の白人
7 London's Burning - ロンドンは燃えている!
8 I Fought the Law - アイ・フォウト・ザ・ロウ
9 Janie Jones - ジェニー・ジョーンズ
10 Career Opportunities ー 出世のチャンス
11 What's My Name? - ワッツ・マイ・ネイム
12 Hate and War - 憎悪・戦争
13 Police and Thieves - ポリスとコソ泥
14 Jail Guitar Doors - ジェイル・ギター・ドアーズ
15 Garageland - ガレージランド
§ Band Member §
Joe Strummer - ジョー・ストラマー( G,Vo )
Mick Jones - ミック・ジョーンズ( G,Vo )
Paul Simonon - ポール・シムノン( B )
Tory Crimes - テリー・チャイムズ( Ds )
Topper Headon - トッパー・ヒードン( Ds )
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当時の搾取されるだけの若き労働者階級の不満を代弁した過激な言葉が痛烈ながらも、かといって
彼らに決して媚びるように歌詞を書いて叫んでいるわけではない
まさにクラッシュ独自の主張がストレートなパンクに乗っかって生々しい拙い演奏で表現されている
" ジェニー・ジョーンズ "のドラム・イントロと歌い出しの" He's in love with rock'n'roll woaahh "でも
グツグツと心の中でマグマが沸き上がるような感覚がたまらない
そのまま最終曲" ガレージランド "までまったく失速せずに荒々しい演奏が突っ走てゆくその疾走感がいい
半巨大権力、金持ちへの皮肉、確固たる反戦意思、俺だけの暴動を起こせ、ロンドンは今退屈に燃えて
いる、既存のルールや常識・価値観への反抗…決してそれらが彼らの若さ故の主張などとは思わないが
死ぬまでそんな自分を貫いてやるという強い意志が、この拙くて生々しくて荒削りなジョーの叫びから
感じられるこれぞパンクの原点…当時の若者に熱狂的に支持されたのもよく分かる
The Clash - Janie Jones (Official Audio)
The Clash - White Riot (Official Video)
The Clash - I Fought the Law (Official Video)
ジョー・ストラマーは自らの音楽によって、いかにして大衆に思考させることができるのかを常に
考えていたと思う
実際、中流階級出身のインテリだったのでパンクはアティチュードだという発言、政治的発言、歌詞に
おいても扇動的ではあったが戦略でもあったと思う
そして彼の信条には彼の兄が極右団体に属し、自殺を遂げたという体験が強烈な影響を与えたはず
反米愛国を唱えながらもアメリカ仕様のデビュー盤は彼らなりのアメリカ向けの内容であり、アメリカで
レコードを売ること即ち自分たちのメッセージを伝える当然の戦略であったろう
バディ・ホリー亡き後のクリケッツが放ったヒット曲" アイ・フォウト・ザ・ロウ "のカバー曲が収録
されているのもそのひとつだと思う
そして彼らは確かに自他ともに認めるパンク・ロッカーであったが、一流ミュージシャンでもあった
歌唱力はそれほどでもないが、このデビュー作では非凡なソングライターぶりが伝わってくる
自らをガレージ・バンドと称しながらも、60'sガレージのトリビュートではなくロックン・ロールの
本来あるべき姿を体現しただけで、余計な音を削り落とし、湿度の高い地下室のようなスタジオで
マイク1本に皆で向かいワンテイクで録音と、必要最小限の設備で録音したようなチープなサウンド
ながらも、もし音楽に出会わず楽器を手にしなかったら、ただのチンピラに終わっていたような若者の
フラストレーションをぶつけたようなサウンドがこのアルバムには貫かれていて、聴けば聴くほど
体感温度が上がっていく感覚にとらわれる
パンクといってもアメリカのと違ってUKパンクは理論派というよりは、パブ・ロックから出てきた
ちょっと胡散臭いところがあるのが特徴で、そこがまた良いのでもある…分かりやすい
クラッシュもパブの匂いでいっぱいである