圧倒的にパワフルでエモーショナルなヴォーカルと
ヘヴィで雄大でプログレッシブなサウンドが凄まじい
日本のロック伝説バンド、カルメン・マキ&オズのファースト・アルバムで日本ロックの創世記に
四人囃子などと同様、後世に伝える作品を生み出したバンド
サウンドは郷愁を感じるようなフォーク色、メロトロンなどのアレンジにみられるプログレ的な音色、
それにブルース、ハード・ロック色などが入り混じったもので、やはり当然ながらカルメン・マキの
存在感には終始圧倒される
この堂々たる歌唱、表現力は聴く者の心に何かを訴えるだけのものがある
個人的にはハード・ロック的な曲よりも、フォーキーな歌に魂を揺さぶられるものを感じる
古き良きもの、切なさ、やるせなさ、昭和、青春…そういった感傷を思い起こさせる歌である
§ Recorded Music §
1 六月の詩
2 朝の風景
3 Image Song
4 午前1時のスケッチ
5 きのう酒場で見た女
6 私は風
§ Band Member §
カルメン・マキ( Vo )
春日 博文( G )
千代谷 晃( B )
古田 宜司( Ds )
石川 清澄( Key )
- Guest -
深町 純( Key )…etc
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初めて日本語をロックのリズムに違和感なく乗せることに成功したバンドで、もっと評価されて然るべき
バンドであり、カルメン・マキの類い稀なヴォーカリストとしての才能は、未だに彼女を超える人は
いないように思えるし、演奏もさることながら詞が素晴らしく、どの詞も胸に響くのだが" 私は風 "が
とりわけ印象的である
自立した女の生きざまを歌い上げ、まるで今の時代を暗示するかのような詞で、自立した、解き放たれた
女性賛歌の詩である
囁きのような柔らかな歌声から絶叫のシャウト、ドスのきいた重低音から天使のファルセット、
ゆったりと歌い上げるバラードから疾走するスピード感、これほどまでに変幻自在に瞬時に切り替える
力は日本の歌い手の中で随一、" うまい "の一言に尽きる
ヴォーカルのカルメン・マキの感情ある歌いっぷりもさることながら、やはり春日博文のねちっこくも
日本人の琴線を揺さぶるギター、" イメージ・ソング "における中間のギター・ソロは懐かしさお感じ
させながらも大らかなプレイは和製ロック・ギターの手本である
キーボードの深町 純の参加も華を添えているが、もっと評価していいのがリズム陣で、よく歌うベースも
素晴らしいが圧巻は当時15歳の古田宜司のドラムス、その後、佐野元春のハートランド、奥田民生
バンドの屋台骨を支える名ドラマーの若き日のプレイに、その後の成熟の原点が垣間見られる
邦人ハード・ロックの最高作であること間違いなし
当時は欧米のロックが主流で日本ではまだまだフォークが幅を利かせていた時代に、これほど完成度の
高いロック・ミュージックが存在していた
" 明日からは身軽な私、風のように自由に生きるわ "
" どうせ私は気ままな女、気ままな風よ "
" 身軽な私 "と言い続けなければ身軽でいられなかった時代、" 自由に生きるわ "と叫び続けなければ
自由に生きられなかった時代、" 気まままである "ことの代償として多くのことを失わなければ
ならなかった時代…当時泥沼の中から見上げるほかなかった空の高みを、今は高校生や中学生が軽々と
舞っている
汽車に乗って遠くに行けた時代、午前1時には犬の遠吠えも聞こえてこない静寂が街を包んだ時代、
今からそんな時代を眺めて純朴と呼ぶのも、貧しいというのも、遅れていると評するのもどこか
間違っているように思える