Thin Lizzyのツイン・リード・ギターの完成形を見た
後のロック・シーンにも多大な影響を与えている作品
内容は語るまでもなく崇高で、この時期のメンバー以外では絶対に制作できないであろう
フィル・ライノットは当時の" 負の連鎖からの脱獄 "を若者たちに示し、また" 子供たちに大人が絶望
している姿を見せてはいけない "とも語っている
シン・リジィは、あまりにも不安定で紆余曲折しているように見えるが、それでも心配は無用、彼らは
これからも未来にその輝きを示していくと思う
不遇だった時代にブライアン・ダウニーは" 自分たちは音痴なんじゃないか? "と自己嫌悪に陥ったという
現在の彼らの扱いをみればその答えは明らかで、誰も真似をすることができないほどに素晴らしい
" 音楽シン・リジィ "なのである
ヴァン・モリソンのような歌詞、ジミ・ヘンドリックスのような楽曲、エルビス・プレスリーのような
エンターテイメント、そしてザ・フーのようなビッグ・サウンド…" 皇帝フィル・ライノット "と時代を
彩った" 英傑たち "にしかできないアルバムである
§ Recorded Music §
1 Jailbreak - 脱獄
2 Angel from the Coast - エンジェル・フロム・ザ・コースト
3 Running Back - ランニング・バック
4 Romeo and the Lonely Girl - ロメオとロンリー・ガール
5 Warriors - 勇士
6 The Boys Are Back in Town - ヤツらは町へ
7 Fight or Fall - ファイト・オア・フォール
8 Cowboy Song - カウボーイ・ソング
9 Emerald - エメラルド
§ Band Member §
Phil Lynott - フィル・ライノット( Vo,B,G )
Scott Gorham - スコット・ゴーハム( G )
Brian Robertson - ブライアン・ロバートソン( G )
Brian Downey - ブライアン・ダウニー( Ds )
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フィル・ライノットとブライアン・ダウニーのリズム作りにブライアン・ロバートソンとスコット・
ゴーハムのギターは決して邪魔をしない
この後、時代の流れでハードさを期待されていくが、ここはアイリッシュ・バンドとしての独特の
叙情性を感じさせる作品である
名作といわれる処以ではあるが、ツイン・ギターのどことなくアイリッシュな牧歌的なサウンドは
もう二度と聴くことはできない…真似できるバンドが出てこないからだ
彼らにしかできないサウンド、ツイン・ギターになって以来成長を続けていたシン・リジィ・サウンドが
いったん完成形を披露した名盤であり、彼らの歴史において非常に重要なアルバムである
" 脱獄 "はシン・リジィの典型的なスタイルともいえるハード・ロック・ナンバーで、この1曲だけでも
グループがハッキリと自らの音楽性をしっかりと確立したことがわかる
核となるのは一見普通に聴こえるが、ギター・リフとストロークを交えた2本のギターとベースのコンビ
ネーションによるリズムであり、そこに時折ハードなリード・トーンが加わりアクセントを加えている
" エンジェル・フロム・ザ・コースト "はファンク風のリズムを加えつつも、それを高速に処理する
ことによってその臭さを抜きハード・ロック化したような曲で、これは前々作あたりまでの雑食的な
音楽性をうまく消化してしているといえる
カッティング+リードやツイン・リードを絶妙に加えたリード・ギターも聴きもの
" ランニング・バック "は緩めのカントリー・ブギをポップに消化したような曲、" ロメオとロンリー・
ガール "はカリブやラテンのテイストに加え、西海岸風の穏やかさも感じさせる緩めのパワー・ポップ、
ラウンド風の演奏も加えた2本のギターによるリードも聴きものである
" 勇士 "はブルース・ロックをベースにしたハード・ロックで、この曲も彼らのイメージ通りの仕上がり、
ワウを加えた噛みつかれるようなギター・ソロと重厚なコーラスも聴きもの、" ヤツらは町へ "は彼らの
イメージそのままのハードなロックン・ロール・ナンバー
前作でみられたハード・ロック色はやや後退し、それ以前の雑食性の高い作風に戻った印象も受けるが
全体的に硬質なイメージで統一されている
また、前作ではツイン・リードがかなりの頻度で登場していたが、本作ではそれも控え目になり、
一方がリードを取れば片方はバッキングというふうに役割分担がされている
それだけにたまに聴かれるツイン・リードは強い印象を残すことになるが、これはおそらく計算された
ものだと思う
楽曲も、どれも練られており、メロディの良さに加えて人懐っこいくらいに親しみやすい