ファンタジックかつジャージーな音楽性へと
シフトした1977年作5th
キャメルは1977年リリースの本作からベーシストがダグ・ファーガソンからリチャード・シンクレア
に代わり、その影響は本作を聴けば判然としていて、シンクレアの表情豊かなベース・プレイと
ヴォーカルが見事に楽曲に反映されている
そしてもう一人の立役者メル・コリンズ、この人の吹きっぷりは実に鮮やかで、その何色にも変化する
ホーンの音色はとても親しみやすくかつ心地がいい
この2人の参加によって一弾押し上がったキャメルのサウンドを愉しむことができる
次々と飛び出すカラフルなチューンの数々は実に馴染みやすく万人に愛される1枚であろう
アンドリュー・ラティマーのメロウなギターと、ピーター・バーデンスの美しいシンセも見事で、繊細で
柔らかなメロディをのせたとても聴きやすいアルバムである
§ Recorded Music §
1 First Light - 光と影
2 Metrognome - メトロノーム
3 Tell Me - 君の心に
4 Highways of the Sun - 太陽のハイウェイ
5 Unevensong - 心のさざ波
6 One of These Days I'll Get an Early Night - 夜のとばり
7 Elke - 白鳥のファンタジー
8 Skylines - スカイライン
9 Rain Dances - 雨のシルエット
§ Band Member §
Andrew Latimer - アンドリュー・ラティマー( G,Vo,Flu )
Peter Bardens - ピーター・バーデンス( Key )
Andy Ward - アンディ・ウォード( Ds )
Richard Sinclair - リチャード・シンクレア( B )
Mel Collins - メル・コリンズ( Sax )
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70年代のキャメルは高水準のアルバムを次々と送り出す魅力的なグループだった…ただ全体に軽いと
いうか一歩間違うとイージー・リスニングになってしまう危うさがあり、それを繋ぎ止めていたのが
アンドリュー・ラティマーの時折ヘヴィになるギターだったと思う
このアルバムはフュージョン寄りに舵を切ったことが一番の特徴で、さらにメル・コリンズの素晴らしい
演奏が加わり、ラティマーとコリンズの2つの重さが出来たことがポイントだと思う
パッションを表現するのは、本来ピーター・バーデンスの仕事だったが、ブルース出身のバーデンスは
ハモンドではなくシンセサイザーや電子ピアノ専門になり、音に彩りを加えることはあってもソロは
なかなか弾かなくなった
" 心のとばり " " スカイライン "はバーデンスのソロが聴ける貴重な曲であり、シンクレアとアンディ・
ウォードの叩き出すリズムは見事である
1曲目" 光と影 "にはソプラノ・サックスでメル・コリンズが参加、キング・クリムゾンの究極の逸品
" レッド "の" スターレス "にも加わっているが、彼が参加した楽曲に外れないし、静かなギターの
アルペシオから始まり、ベースとドラムが加わって一気に華やかなキャメル・ワールドの突入、主旋律を
キーボードが奏でそれをギターが引き継ぎ、躍動感あるベース・ラインをバックにメル・コリンズの
サックスが華麗に響き渡って曲が終わる
3曲目" 君の心に "はそれまでのキャメル・ミュージックの弱点だったヴォーカル・パートを新参加の
リチャード・シンクレアが補って、いい雰囲気のヴォーカル・チューンに仕上がっている
シンクレアの" 雨のシルエット "と" ブレスレス "への貢献度は大であった
" 心のさざ波 "と" スカイライン "はスリリングで躍動感あふれる彼らならではのプログレ・チューン、
" 白鳥のファンタジー "とラストに置かれた" 雨のシルエット "では、しっとりと抒情的なメロディを
聴かせてくれる
ブリティッシュ・バンドならではのサウンド・メイキングでありメロディ・センス、ブリティッシュ
ロック好きは要チェックの1枚である
リチャード・シンクレア、メル・コリンズがゲスト参加したこの新しい血の流入はキャメルに絶大な
変化をもたらし、一部の曲ではかなりモダンでポップなアプローチが聴かれる
特にメル・コリンズのサックスはサウンドに力強さを与えていて聴きものである
シンクレアは彼らしいヴォーカルを聴かせてはなく、曲作りにもほとんど参加してないが、既に見事な
ベース・プレイを聴かせていて、この変化への貢献は大きい
" 白鳥のファンタジー "にはブライアン・イーノもシンセなどで参加し、このアルバムに華を添えている
次作も名盤だが、本作はその布石という位置づけではなく別物と捉えたほうがいい名作である
これ以前のキャメル・ミュージックは繊細な思春期的音楽だったとするなら、ここからは成長した
独立人の世界、バンドのグループ感も増し、プログレはロックするギター・サウンドという基本になった