スワンプ・ロックの世界とソング・ライティングの
冴えを堪能できる名作中の名作
アメリカでも独特の文化を持つ南部から登場してきたこの才人は、当時ブリティッシュ・ロックが
主流だった日本のロック好きの世界を一気に押し広げてくれた
ゴスペルやヴードゥーの匂いをプンプンさせ、独特のしわがれ声でピアノを弾きながらどさ廻りの
サーカス一座の哀歓を歌うレオン・ラッセルのこのアルバムは、そのジャケットを含めて未知の驚きに
あふれていた
ジョージ・ハリスンやエリック・クラプトンがその魅力に惚れ込んだのもよくわかるし、その
素晴らしいソング・ライティングゆえ多くのアーティストがレオン・ラッセルの曲をカバーしている
§ Recorded Music §
1 Tight Rope - タイト・ロープ
2 Out in the Woods - アウト・イン・ザ・ウッズ
3 Me and Baby Jane - ミー・アンド・ベイビー・ジェーン
4 Manhattan Island Serenade - マンハッタン島のセレナーデ
5 Cajun Love Song - ケイジャン・ラヴ・ソング
6 Roller Derby - ローラー・ダービー
7 Carney - カーニー
8 Acid Annapolis - アシッド・アナポリス
9 If the Shoe Fits - イフ・ザ・シュー・フィッツ
10 My Cricket - マイ・クリケット
11 This Masquerade - マスカレード
12 Magic Mirror - マジック・ミラー
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豪華な共演陣と作り上げた前作、前々作とは異なりシェルター・ピープルを引き継ぐ少数の仲間だけで
制作されていて、自らの半生をサーカスのピエロをモチーフに描き出した半自伝的な作品とされている
たしかに前作までの祝祭感とはまるで異なる手触りのアルバムで、プロデュサー的な色彩の強かった
これまでのキャリアと異なるシンガーとしての出発である
ここでのレオン・ラッセルは違和感なくシンガー・ソングライターとして括ることができるし、
ヴォーカルもズブズブではなく幾分すっきりと、しかし生々しく歌っている
" タイト・ロープ "のしゃがれた声と隙間ある奇妙なバッキングを聴いただけでたまらない
" レオン・ラッセル " " シェルター・ピープル "で大所帯バンドのバンド・マスターのような才能をみせた
レオン・ラッセルだが、すべての曲を書いたこの作品ではとても" ソロ "を感じさせる
コーラスが少なくて、彼のしゃがれた声に徹底的に付き合わされるからそう感じる
ベースにカール・レイドル、ドラムにジム・ケルトナー、チャック・ブラックウェルという面々で
粘着力あるリズムは健在である
このアルバムで印象に残るのは孤独感…ミュージシャン生活を道連れなしに綱渡りをする芸人に例えた
筆頭曲がその象徴である
パーソナルな孤独や疲労感をロックの中に表現し始めた意味ではレオンは先駆者だったし、どの曲も
シンプルなのに心に残るメロディ、ピアノのパッセージを持っていて癒されるし、長く聴ける作品である
レオン・ラッセルが1972年にリリースした3rdアルバムで、おそらくこのアルバムが彼のキャリアの
なかで最高傑作といっても過言ではない
初のシングル・ヒット曲となった" タイト・ロープ( 全米11位 )"や、カーペンターズやジョージ・
ベンソンのカバーでお馴染みの" マスカレード "( ジョージ・ベンソンのカバー・ヴァージョンは
1977年グラミー賞の最優秀レコード賞を受賞 )などの代表曲を収録し、ほかにも秀逸な曲が満載で
アルバムとしてもまとまりがあると思う
アルバム・ジャケットは怖いが、" タイト・ロープ "から聴かせる曲の多いこのアルバム、南部音楽が
もっとも注目を浴びた時代の時代の作品である