メガヒットを記録した前作" Hysteria "からまたしても
4年半という長期ブランクを経てリリースされた5th作
デフ・レパードの1992年の5作目で、制作が遅れた主要因は、プロデューサーに関するゴタゴタと
メンバーであったスティーヴ・クラークの健康問題( 後に死亡 )という前作制作時とおおよそ類似した
事態によるものだった
彼らの前作、前々作はバカ売れしてしまって今となっては少々陰の薄い感じの作品かも知れないが
発売された当時はとてつもなく売れていて、出すシングルはどれもチャート・インというこのアルバムも
前作に負けないほどの完成度とともに、手がつけられないほどの人気を誇っていた
§ Recorded Music §
1 Let's Get Rocked - レッツ・ゲット・ロックド
2 Heaven Is - ヘヴン・イズ
3 Make Love Like a Man - メイク・ラヴ・ライク・ア・マン
4 Tonight - トゥナイト
5 White Lightning - ホワイト・ライトニング
6 Stand Up ( Kick Love Into Motion ) - スタンド・アップ
7 Personal Property - パーソナル・プロパティ
8 Have You Ever Needed Someone So Bad - サムワン・ソー・バッド
9 I Wanna Touch U - アイ・ウォナ・タッチ・ユー
10 Tear it Down - ティア・イット・ダウン
§ Band Member §
Joe Elliott - ジョー・エリオット( Vo )
Phil Collen - フィル・コリン( G )
Rick Savage - リック・サヴェージ( B )
Rick Allen - リック・アレン( Ds )
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方向性としては" ヒステリア "に極めて近似した作風であり、ギミック、テクノロジーを多用したポップ色
の濃いハード・ロック作品となっている
ダイナミックなドラム・サウンドを大々的にフィーチャーしたリズミックな楽曲アレンジ、パーティ
R&Rとスロー・バラードを巧みに配置した楽曲群構成など、1980年代型HR/HMのフォーマットを忠実に
継承したアルバムで、" ヒステリア "は大作志向の楽曲が魅力でもあったが、このアルバムはシンプルで
キャッチーな楽曲で埋め尽くされている
ほとんどの楽曲のクレジットにはメンバーの名前があるが、中心は制作途中で亡くなったスティーヴ・
クラークの作品である
暗いグランジブームが到来する直前のハード・ロックが明るく楽しい音楽だった良き時代の音が
詰まっている
前作が宇宙空間を思わせるサウンドであるのに対し、本作ではよりデフ・レパードらしさが強まっている
つまり聴けばすぐ彼らだとわかるような要素が濃くなっていて、" ヘヴン・イズ "や" アイ・ウォナ・
タッチ・ユー "のイントロ、" トゥナイト "や" スタンド・アップ " " サムワン・ソー・バッド "などの
切ないコーラスとメロディなどが好例である
本作はメンバーのスティーヴ・クラークの死という危機的な状況を乗り越えて出来たわけだが、悲壮感は
なく逆に聴いていて爽快な曲が多い
そして人の琴線に思い切り触れてくるバラードやメロディ・ラインは素晴らしいとしか言いようがない
前作ではドラマーの事故でアルバムの制作が遅れたが、今度はギタリストのスティーヴ・クラークが
酒のため命を落とした
このバンドの凄いのはトラブルにもめげず徹底してデフ・レパード・サウンドを作り上げるところにある
吟味されたメロディ・ラインとコーラスの重なり、演奏力とすべてが凄まじい気迫の上に練り込まれて
いるし、相変わらずバラードのメロディ・ラインは美しく、ギターの重なり方、曲を支えるベース・
ライン、片手とは思えないドラミング、曲に命を吹き込むヴォーカル、そしてイギリス人らしい拘りで
またもや素晴らしいアルバムを作り上げた
世界にその名を知らしめたデフ・レパードの三部作の最終章、最後を飾るにふさわしいアルバムを
彼らはいつものように妥協することなく作り上げた