シンプルでストレートでソリッドなサウンドが魅力的
1971年発表の6作目、ジム・モリソンが生存中に制作されたグループの実質的なラスト作で、デビュー作
" ハートに火をつけて "から前作" モリソン・ホテル "までプロデュースを担当していたポール・
ロスチャイルドに代わってブルース・ボトニックが担当し、マーク・ベノ(g)、ジェリー・シェフ(b)を
加えた大編成のバンド・サウンドを目指すなど意欲的な作品だったが、ジム・モリソンの死によって
今後の展開が消滅してしまったことは非常に残念だった
本作も前作でみられたブルース/R&B路線の曲が目立ちどれも完成度が高いが、ジョン・リー・
フッカーの" クローリング・キング・スネーク "を取り上げるなど、更にその路線を掘り下げている印象が
あり、ジムのヴォーカルもバンドの演奏も本格的でありながら黒っぽさがあまり感じられず、それが凡庸
のブルース系のグループとは大きく違うところである
§ Recorded Music §
1 The Changeling - チェンジリング
2 Love Her Madly - ラヴ・ハー・マッドリー
3 Been Down So Long - ビーン・ダウン・ソー・ロング
4 Cars Hiss by My Window - カーズ・ヒス・バイ・マイ・ウィンドウ
5 L.A. Woman - L.A. ウーマン
6 L'America - ラメリカ
7 Hyacinth House - ヒヤシンスの家
8 Crawling King Snake - クローリング・キング・スネーク
9 The WASP ( Texas Radio and the Big Beat ) - テキサス・ラジオ
10 Riders on the Storm - ライダーズ・オン・ザ・ストーム
§ Band Member §
Jim Morrison - ジム・モリソン( Vo )
Ray Manzarek - レイ・マンザレク( Key )
Robby Krieger - ロビー・クリーガー( G )
John Densmore - ジョン・デンズモア( Ds )
-- Additional Musicians --
Jerry Scheff - ジェリー・シェフ( B )
Marc Benno - マーク・ベノ( G )
|
ドアーズというとジム・モリソンの文学的な詞と呪うようなヴォーカル、それを煽るオルガンを中心と
した演奏ということになるが、このアルバムはそういったこれまでのドアースのアルバム群と趣がかなり
違って非常に音楽的、ロック的なのである
ヴォーカルは以前と違って荒々しい如何にもロックというもの、演奏もオルガン中心よりエレキ・ギター
がかなり前面に出てきていて、結果これまでの呪いをかけるような音楽ではなく、聴きやすい、そして
如何にもロックという音楽に出来上がっている
この背景にはジム・モリソンの麻薬漬けによる活動障害という状況が絡んでいるものと思われる
そうはいっても、オリジナリティが無くなった、クオリティが下がったというのではなく、録音機材を
スタジオから彼らのオフィスに移してセッション、録音を行ったなどということからもバンドの中で
当時のバンド、ジム・モリソンを取り巻く状況を積極的に引き受けて、原点回帰的なロック、ロックン・
ロール路線でいこうと考え、あえてこれまでのドアーズ路線を捨てて制作したアルバムではないかと思う
結果、このアルバムは聴きやすくロック的であることから彼らの人気作のひとつとなった…もちろん
遺作というのも手伝ってという点もある
ブルース色の濃い1枚で、特筆すべきは方向性の迷いが消えているということ、前衛、ロック、ブルースを
使い分けていたドアーズだが、良くいえば多彩、悪くいえば何のバンド?というような掴めなさもあった
最悪の形でそれが出たのが" ソフトパレード "だが、このアルバムは例のドアーズらしい曲もあるが
全体としてはアメリカくさい無骨の極みとでもいうか、シンプルでブルージーな統一感が打ち出されて
いて、そしてジム・モリソンの吹っ切れたような伸びやかでノリの良い歌声…なんかスッキリしすぎだ
と思いながらも聴いていると病みつきになる