BOSTONのサウンドはアメリカン・ロックの
未来像を明らかにするもののひとつだった
ボストンといえばアメリカ東部、ニュー・イングランド地方の最大の都会であり、マサチューセッツ州の
州都として知られているところである
1960年代後半、ボストンはサンフランシスコに続く新しいロックのメッカになるだろうと華々しい脚光を
浴び、同時にボストン出身のグループ、アース・オペラ、ビーコン・ストリート・ユニオン、アルティ
メイト・スピナッチなどが紹介されたことがある
もっともそれはサンフランシスコのロック・グループの成功に目をつけたいくつかのレコード会社が目論
んでのことであり、さらにボストンがサンフランシスコほどのグループ層を持っていなかったことも
あって、やがてこれといった噂も聞かなくなる
それでもボストンのロック・シーンやグループの存在が知られ始めたのはそんなことがあってから、
そして70年代に入るとともに、J・ガイルズ・バンド、ジェイムス・モンゴメリー・バンド、さらには
エアロスミスらの出現によって、またもやボストンのロック・シーンが注目されるようになった
§ Recorded Music §
1 More Than a Feeling - 宇宙の彼方へ
2 Peace of Mind - ピース・オブ・マインド
3 Forplay / Long Time - フォープレイ/ロング・タイム
4 Rock & Roll Band - ロックン・ロール・バンド
5 Smokin' - スモーキン
6 Hitch a Ride - ヒッチ・ア・ライド
7 Something About You - サムシング・アバウト・ユー
8 Let Me Take You Home Tonight - レット・ミー・テイク・ユー・ホーム・トゥナイト
§ Band Member §
Brad Delp - ブラッド・デルプ( Vo,G )
Tom Scholz - トム・ショルツ( G )
Barry Goudreau - バリー・グロドー( G )
Fran Sheeham - フラン・シーン( B )
Sib Hashian - シブ・ハシアン( Ds )
Jim Masdea - ジム・マスディア( Ds )
そしてボストン出身のグループ、それも出身地をそのままグループ名としたボストンがデビューを飾る
ことになった
そもそもの話はマサチューセッツ工科大学出身で、ポラロイド社のプロダクト・デザイン・チームの一員
として働いていたこともあり、ローカル・バンドの一員として活動していたトム・ショルツが12トラック
のレコーダーを手に入れ、さまざまな試みを重ねるうち制作したホームメイド・テープがレコード会社な
どで評判を呼び、それをきっかけとしてトムはグループ結成を思い立ちボストンで名の知れたミュージシ
ャンを集めてスタートさせた
それはともかく、ボストン出身のニュー・グループであるということだけでも彼らには十分惹きつけられ
るところがあったが、加えてこのアルバムのプロデュースを手がけたのがジョン・ボラインであったこと
が彼ら、さらにはこのアルバに対する興味、関心を一層高めることになった
彼らはある程度のサウンドを持っていたが、それだけにとどまるものではなかった
それもある意味では予想もしなかったサウンドの登場に少なからず驚かされ、同時にまたしても彼らに
対する興味がつのり始めた
アルバムのオープニングを飾る" 宇宙の彼方へ "は、アコースティカルなサウンドとエレクトロニクス的な
ものが見事な一致をみせたポップ・バラード的な要素もあるナンバーシャープな切れ味が爽快である
続く" ピース・オブ・マインド "も同様のサウンドとスタイルを持つロックン・ロール、前曲もそうだが
ヴォーカル、コーラス、バックのサウンドなどはラズベリーズ、ポコ、イーグルスなどを彷彿とさせて
いてメロディアスな作品、リズム感、サウンドの爽やかさ、ストレートなところはアメリカン・ポップス
的なものを強く感じさせているし、伸びのあるギター・サウンドが魅力となっている
メドレー曲で前半の" フォープレイ "は、これまでの作品とはうって変わってプログレッシブ的というか、
エレクトロニクスを駆使してのインプロヴィゼイションが展開され" ロング・タイム "は先の曲と同様に、
ポップ的サウンドを持つがそこにプログレ的要素もふんだんに見い出せる
ボストンのサウンドでもっとも魅力的なものとしては、ひとつひとつの作品がメロディアスなポップ感覚
に溢れているのを始めとして、爽やかなヴォーカル、コーラス、さらにシャープな切れ味の斬新なバック
サウンドなどが挙げられる
そうしたところは先にも触れたようにポコ、イーグルス、ラズベリーズといったポップロック・グループ
のサウンドを彷彿させるところがあるが、彼らはそんな亜流的なものにとどまらず、そこに新しい要素を
織り込んで独自のスタイルを作り出している
その新しい要素とは、いうまでもなくエレクトロニクスを駆使しての奥行きの深いサウンド作りであり、
それもプログレッシブ・ロック的な作品といえる" フォープレイ "がまさに物語っているように、ひとつ
の枠にとどまらぬ新しい音楽性をも生み出している
彼らのサウンドは、まさに70年代のグループらしい新しさを随所に見い出せる
そして彼らのサウンドはアメリカン・ロックの未来像を明らかにするもののひとつだったことに間違い
はなかった