新グループ、寺内タケシ&ブルージーンズが結成されたとき
すでにこのアルバムの企画が始まっていた
あまりにも、アルバム" レッツ・ゴー運命 "が大きなヒットになり、新メンバー" ブルージーンズ "に
形が変わってからも当時は、大きな売り上げを示していたため、うかつに新メンバーでレコーディングを
することはできなかった
以前のアルバムより数段よくなってきたとき再び、この大企画に寺内タケシは挑戦することになって
いたようである
1970年6月、機は熟しこのアルバムのレコーディングが始まった
前作の12曲はもちろん、新しく12曲がこれに加わり24曲を一気にレコーディングしなければならなかった
§ Recorded Music §
1 チゴイネルワイゼン( サラサーテ )
2 ピアノ・コンチェルトNo.1( チャイコフスキー )
3 軽騎兵( スッペ )
4 家路( 新世界交響曲 )( ドヴォルザーク )
5 ハンガリー舞曲第5番( ブラームス )
6 口笛吹きと犬( ブライアー )
7 天国と地獄( オッフェンバック )
8 カルメン( ビセー )
9 軍隊行進曲( シューベルト )
10 白鳥の湖( チャイコフスキー )
11 英雄のポロネーズ( ショパン )
12 トルコ行進曲( モーツァルト )
13 運命( ベートーヴェン )
14 熊蜂の飛行( リムスキー・コルサコフ )
15 未完成( シューベルト )
16 乙女の祈り( バタルチェフス )
17 エリーゼのために( ベートーヴェン )
18 ある晴れた日に( プッチーニ )
19 アルルの女( ドーテー )
20 剣の舞( ハチャトリアン )
21 ペルシャの市場にて( ケテルビー )
22 ドナウ川のさざなみ( イバノビチ )
23 ショパンのノクターン( カーメン・キャバレロ )
24 結婚行進曲( メンデルス・ゾーン )
まず第1段階は、新しい12曲の選曲から始まった
クラシックの膨大な数の中から、素材として使用する曲を選ぶことは一見簡単にみえ実は一番神経を使い
かつでき上がった作品の善し悪しを大きく左右してしまう
このため寺内タケシおよび制作スタッフは、これまた大変な数のクラシックを聴かねばならなかった
耳から入ってくるモーツァルトもドヴォルザークも頭の中では直ちに寺内タケシのエレキ・ギターに
早変わりしてしまっていた
こうして選曲が終了し、第2段階の編曲へ移っていくと、いよいよ編曲者" 寺内タケシ "がそれぞれの
曲の作曲家と苦悩の対決をするわけである
ベートーヴェン、シューベルト、チャイコフスキー、ブラームス…24曲どの曲をとってみてもすべて
名曲中の名曲であり、もはや編曲のしようのない作曲なのである
いつものように筆をスラスラ走らせるわけにはいかなかった
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原曲の良さを損ねないようにし、かつ、そこからエレクトリックでモダンなサウンドに乗せて少しも
おかしくない現代性を引き出さなければならなかった
もうひとつの大きな障害となり寺内タケシの前に立ちはだかったことは、前作もそうであったように
クラシックはその時代、その時代の楽器によって演奏されていたことであった
これは、あたり前のことであるがヴァイオリンなり、チェロなり、ピアノなり、その他クラシック楽器は
寺内タケシのギターの指運( 指使い )とは大変かけ離れている
ある楽器のために作曲された曲は、その楽器のみが可能なテクニックと音域が使われているため
それをエレキ・ギターで奏する場合は大変困難な場合がかなり出てくる
寺内タケシが、この24曲での編曲上で苦労したことは多々あった
編曲が出来上がると第3段階は、メンバーとの打ち合わせと練習
普段やりなれているものとは違い、数倍の時間がかかった
しかし、メンバーには前作バニーズには負けまいとするアーティスト特有の闘魂が感じられ、練習場は
深夜から明け方まで明かりが煌々と灯っていたそうだ
こうして第4段階に入る
編曲や練習の苦労などどこ吹く風、実に楽しくやっているが最終段階であるから神経だけはピリピリ
張りつめている
寺内タケシは、音楽上だけでなく録音技術も大変よく研究していて、吹き込みの際はかなり緊張するし
気も入っているとミキサー担当者が言ったほどだった
" レッツ・ゴー・エレキ交響曲 "
お世辞ではなく" 世界のポピュラー・レコード史に残る日本では数少ない作品 "と称賛されてもよい
アルバムになっている