井上陽水の3枚目のオリジナル・アルバム
1973年にポリドール・レコードよりリリース
当時の日本人アーティストとしては珍しく、ロンドンでレコーディング
クォーターマスのメンバーであったピート・ロビンソンとジョン・ガスタフソン、後にイアン・ギラン
バンドに参加するレイ・フェンウィック、ローリング・ストーンズの" 哀しみのダイアリー "のストリン
グス・アレンジャーに務めたニック・ハリソンなど、現地のミュージシャンが参加している
§ Recorded Music §
1 あかずの踏切
2 はじまり
3 帰れない二人
4 チエちゃん
5 氷の世界
6 白い一日
7 自己嫌悪
8 心もよう
9 待ちぼうけ
10 桜三月散歩道
11 Fun
12 小春おばさん
13 おやすみ
アルバム" 氷の世界 "は100週以上ベスト10に留まるなど、ロング・セールスを続け発売から2年後の8月に
日本レコード史上初のLP販売100万枚突破の金字塔を打ち立てた
また、オリコンのLPチャートでは5度も1位に返り咲くという珍記録を持っている
1982年にCDが発売される前のミリオン・セールス・アルバムの4作品のうちの一作品
井上陽水の" 氷の世界 "のほかは
松山千春 " 起承転結 " ⇢ " 季節の中で " " かざぐるま "収録
寺尾 聴 " Reflection " ⇢ " ルビーの指輪 " " シャドゥ・シティ "収録
YMO " ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー " ⇢ " ライディーン " " テクノポリス "収録
レコード・ジャケットは楽屋でギターを奏でる井上陽水を写したもので、このギターは忌野清志郎の
所属品であることを忌野清志郎が後日談として語っている
" はじまり " " 自己嫌悪 "には高中正義が参加、" 白い一日 "の作詞は小椋 佳で1974年にシングルとして
リリースしている( 歌詞とメロディがわずかに異なる )
" 帰れない二人 "はシングル" 心もよう "のB面の収録曲で、忌野清志郎との合作でRCサクセションの
当時に未発表曲であった" 指輪をはめたい "をもとに制作、イントロはニール・ヤングの" ダメージ・
ダン "の影響を受けている
井上陽水はこの曲をA面にするように主張していたほどお気に入りの曲だったとのことだが、後に自身は
どちらでもよかったとのこと…
ただし、どちらかというと" 帰れない二人 "だったようで、" 心もよう "は歌謡曲の延長だったけど
" 帰れない二人 "は新しい息吹を感じていたんだとか、もしA面が" 帰れない二人 "だったらの質問に
" もうちょっとオシャレな感じの見られ方をしていたかもしれないですね "と語っている
ちなみに" 心もよう "…当初は" 普通郵便 "というタイトルだったらしい
1973年、当時はフォーク・ブームの絶頂、日本レコード史上初めてミリオンセラーを打ち立てたアルバム
で確かに名曲ぞろい、今聴いても古臭さを感じさせないアルバムである
" 小春おばさん "のようなセンチメンタルな気分に浸かる曲は、井上陽水の真骨頂だし" 氷の世界 "の
スピード感あふれる曲と、少しシュールというか" 狂気 "的な歌詞の取り合わせが印象的だ
" 自己嫌悪 "は、その歌詞に使われている言葉によって制作会社がひと時自主規制を実施
差別を生み出した状況は問題だと思うが、芸術作品における" 言葉狩り "は表現の巾を狭くする恐れが
あるのではないかと思う
いずれにしても、この" 氷の世界 "がなぜここまでのセールスを記録したのか…それは曲の多様性では
ロック、フォーク、ファンク、ポップスとあらゆるジャンルの曲が散りばめられ、それが" 井上陽水 "と
いう唯一無二のアーティストが詞を書き、メロディを生み出し、それを彼が歌う
だからこそ、この" 氷の世界 "はモンスター・アルバムになったのだと思う