インストゥルメンタルを基盤としSteve Howeが
信条とするギターへの愛着を見事に表現
スティーヴ・ハウのソロ・アルバム第2弾、1975年の段階で" イエス・マン "としては、初めてのソロ
アルバム" ビギニングス "を発表したのはスティーヴ・ハウだったが、第2弾目もスティーヴ・ハウが
リリースした
彼は" ビギニングス "を制作した段階で次作が発表されるだろうことをほのめかしていたし、イエスと
しての活動が1975年当時に比べ多少楽になっていたことと、決定的なのはハウがギタリストであると
いうことである
つまり" イエス "というひとつの完成された、しかもある程度限定された枠の中での音楽活動を続けていく
ことは、多彩な音楽センスと才能に裏付けられたハウにとっては厳しいことだというのがソロ・アルバム
制作の基本的発想であり、ギターに憑かれたミュージシャンとしては当然のはけ口を求めることがソロ
アルバムに結びついた
§ Recorded Music §
1 Pennants - 優勝旗
2 Cactus Boogie - カクタス・ブギー
3 Ales a Chord - 宇宙の調和
4 Diary of a Man Who Disappeared - 消えた男の日記
5 Look Over Your Shoulder - ルック・オーバー・ユア・ショルダー
6 Meadow Rag - メドゥ・ラヴ
7 The Continental - ザ・コンチネンタル
8 Surface Tension - 表面張力
9 Double Rondo - ダブル・ロンド
10 Concerto in D 2nd Monement - ギター協奏曲ニ長調第二楽章
スティーヴ・ハウは根っからのギター・フリークで、実際プレイできるギターは当時65台ぐらいだが
ギター・コレクションは軽く100台を超えていた
ギターは身体の一部なんだ、というハウのギターへの愛着が表れている
今回のアルバムのサポートしたミュージシャンは、前回も参加したビル・ブラッフォード、アラン・
ホワイトのドラマー陣、キーボーディストのパトリック・モラーツのほかに、新たにパーカッションと
して元ジェスロ・タルのクライヴ・バンカーや、かつてソロ・アルバムのレコーディングにイエス・マン
がバックで参加したことのある女性ヴォーカリスト、クレア・ハミル、さらにヴァイオリン奏者の
グラハム・ブレスケット、キーボードのロニー・レーヒーという顔ぶれになっている
前作はヴォーカルが前面に押し出されていたが、ある意味この" スティーヴ・ハウ・アルバム "はその
逆をいっている
つまりヴィヴァルディの" ギター協奏曲ニ長調第二楽章 "のようなクラシックをあえて取り上げようと
試みた裏には、アコースティック&エレクトリック・ギターの特質を完全に曲の上に表現しようという
発想があったことを裏付けているし、事実、曲によってカントリー、ジャズ、ブギーそしてクラシック
のピッキングを使い分けていることなどは、インストゥルメンタルを最大限に活用している点である
このアルバム創りは、非常にリラックスして制作されている点では前作として酷似している
しかし、前作に比べギタリストとしての彼自身の姿が具体的にクローズ・アップという意味ではこの
アルバムを評価する
さっと聴き流してみると、なんとなく曲に一貫性がなくバラバラに聴こえると思うが、これはハウが
イエスでは表現できない一個一個のギターに対する愛着を具体化したものであり、意外性を秘めた
音楽性がアルバム化されているという意味で、実に画期的な作品であった
これだけ多彩な音楽ジャンルが、しかももっとも高度な水準で凝縮されているイエス・サウンドとして
昇華したいのだと考えると、改めてイエスというグループの存在の大きさに気がつく
世にゆう三大ギタリストや、あるいはフュージョン系のギタリストとは基本的に音楽に対する接し方に
気づき、実に人間的で、そして素朴な感性をこのアルバムは見事に伝えてくれている