1973年7月27日から29日にかけて、ニューヨークの
マディソン・スクエア・ガーデンで録音されたライヴ・アルバム
コンサートは、それが行われている会場そのものの空気を非常に凝縮された何か異質なものに変える
だけのエネルギーを持っていなければならない
それは、一種の空間的なトリップを起こさせるほどのものであるべきだ
そのためにもミュージシャンはステージにおいて数々の方法論を試み、いろいろな演出もするのである
レッド・ツェッペリン、彼らは演出らしい演出はほとんどせず、異常なエネルギーの発散と収集とも
いえるステージを、まさに時間を疾走するかのごとく展開し、観衆を圧倒し高揚させたのだ
演出も何もなく、ただメンバーが演奏を続けるだけなのだが、そのステージの八方破れ的な緊張感は
ほかのどんなグループでも味わえないものであった
§ Recorded Music §
1 Rock and Roll - ロックン・ロール
2 Selebration - 祭典の日
3 The Song Remains the Same - 永遠の詩
4 Rain Song - レイン・ソング
5 Dazed and Confused - 幻惑されて
6 No Quarter - ノー・クォーター
7 Stairway to Heaven - 天国への階段
8 Moby Dick - モビー・ディック
9 Whole Lotta Love - 胸いっぱいの愛を
§ Band Member §
Jimmy Page - ジミー・ペイジ( G )
Robert Plant - ロバート・プラント( Vo )
John Paul Jones - ジョン・ポール・ジョーンズ( B,Key )
John Bonham - ジョン・ボーナム( Ds )
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ツェッペリンが世界的なビッグ・ネームになったきっかけは、デビューしてすぐに行ったアメリカ・
ツアーである
ファースト・アルバムを発表した後、イギリスではほとんどコンサートをする機会には恵まれずアメリカ
に渡った
彼らは決してライヴ・グループではなく、どちらかといえばアルバム向きとも思える音楽性を持っている
しかしグループのスケールの大きさをそのまま表現したようなライヴの迫力もまさに別格なものであるが
ツェッペリンはライヴ・アルバムを出さなかった
長い活動を持つグループとしては、それは異例とも思えること
彼らのアルバムのリリースのスケジュールやコンサートのスケジュールは、驚くほどストイックに
そして意識的にコントロールされている
アルバム1枚として駄作がなく、それぞれにグループの変化と成長を示すように実にタイミングよく
発表されている
このアルバムで聴くことのできる" 聖なる館 "以前の曲は、全てその曲の表情を変え、ある意味でまったく
新しい曲として聴く側の前に提示されている
これは解釈として新しくなったアレンジを変えたアルバムにないインプロヴィゼーション・パートが
入ったということではなく、音楽本来の意味において新しくなったのである
" ロックン・ロール "のイントロを聴いただけで、当時のツェッペリンのもっとも新しい音楽の存在に
出会うことができる
それは曲が昔のものであるとか、レコーディングされたのが1973年であるとかを問題にしない
当然スタジオ・ワークの段階で手を加えられた結果のものでもあるが、それはアルバムである以上
当たり前のことである
これはレッド・ツェッペリンのドキュメント映画『 ザ・ソング・リメインズ・ザ・セイム 』のサウンド
トラック・レコードで、1973年のマジソン・スクエア・ガーデンにおけるライヴである
レコーディングされたのは" 聖なる館 "発表当時のもので、演奏楽曲も当然それまでのものばかりと
なっている
" 幻惑されて "の長い演奏、" モビー・ディック "の肉体派ドラム・ソロ、そして" 胸いっぱいの愛を "の
ロックン・ロール的な展開といったところは、古い日本のツェッペリン・ファンにも馴染み深いものだ
ジミー・ペイジは自分たちのブートレッグを出されるのを非常に嫌ったらしいが、彼の音に対する姿勢
から考えれば、それはごく当然の発想だろう
アルバムはロック・ミュージシャンにとって、通常の演奏活動とはまた別の意味を持った自立した
メディアなのである
常にそうしたことに意識的であろうとするジミー・ペイジにとってブートレッグの安易な発想は許し
がたいものであったはずだ
そして、このアルバムはそうしたものへの彼の返答でもある
常に観衆に開かれた音の" 確かさ "の実現を目指すツェッペリンは、ライヴ・アルバムに対する新しい
姿勢を示すと同時に、その歩みの確実さをここにアルバムとして提示した