70年代初頭のシンガー・ソングライター・ブームの源になった重要アルバム
1971年リリースのセカンド・アルバム、Carole King - Tapestry
" Tapestry "という題名の通り人間の心模様を丹念に綴った名作、ビートルズの" アビーロード "と並んで
もっとも売れたアルバムと呼ばれていた
シンガーとしてのキャロル・キングはまだ自信なさげで初々しさを感じるが、それが本作の感情をより
醸し出している
普段聴いてもいいアルバムだが、人と別れたときなど余計心に訴えるところが大きい
キャロルはすべての曲を単独または共同で制作していて、一部の曲はすでに他のアーティストの歌唱に
よってヒットしていた
アレサ・フランクリンの" ナチュラル・ウーマン "とシュレルズの" ウィル・ラヴ・ミー・トゥモロウ "
などが挙げられる
収録曲のうち3曲は、彼女の元夫であるジェリー・ゴフィンと共同で制作したものである
キャロルに自作曲を歌うように勧めた人物であり、このアルバムの演奏にも参加したジェームス・
テイラーは" 君の友だち "をカバーして、全米1位を獲得する大ヒットを記録している
一曲一曲が丹精込めて作られた聴く者の胸に染みわたる佳曲で、それが題名の通り緻密に構成された
傑作アルバムとなっている
§ Recorded Music §
1 I Feed the Earth Move - 空が落ちてくる
2 So Far Away - 去りゆく恋人
3 It's Too Late - イッツ・トゥー・レイト
4 Home Again - ホーム・アゲイン
5 Beautiful - ビューティフル
6 Way Over Yonder - 幸福な人生
7 You've Got a Friend - 君の友だち
8 Where You Lead - 地の果てまでも
9 Will You Love Me Tomorrow? - ウィル・ラヴ・ミー・トゥモロウ
10 Smackwater Jack - スマックウォーター・ジャック
11 Tapestry - つづれおり
12 ( You Make Me Feel Like ) A Natural Woman - ナチュラル・ウーマン
1971年にリリースされたこの" つづれおり "はポピュラー・ミュージック史上に残る名盤で、まだ聴いた
ことのない人はぜひ聴いてみてもらいたい
どこかで聴いたことのある曲が次々出てくるのに驚くはずだ
しかも、それが他人のカバーではなく、まさにキャロル・キングのオリジナルなのだ
彼女の歌はジャンルの垣根を超えてさまざまなミュージシャンに歌われているが、そのように多くに人を
惹きつける理由のひとつは、彼女の歌がただ甘ったるいだけのラヴ・ソングとは一線を画しているから
かもしれない
ピアノを主体としたシンプルな曲のイメージがあるが、彼女に曲にはジャズやブルースっぽいフィー
リングもあり、歌声もいわうる" 美声 "ではなく穏やかに心に触れてくる一方でソウルフルでもあり
いうなればカーペンターズのカレンとジャニス・ジョップリンを掛け合わせたような感じで味わい深い
歌手としてよりもソングライターとして有名だったキャロル・キング、彼女のアンニュイな感情の赴く
ままに放出したといえる感傷的な曲が、多くに日本人の心を捕らえたのだと思う
本作をキャロルのベストという日本人はすごく多いはず、歌手とソングライターのうちどちらかといえば
ライターの方に幾分ウエイトをおいた作りがされていて、その多少気恥ずかしさを残した歌唱方法が
リスナーの心を捕らえた
隠し味で足された上品なジャズやソウル・ミュージックのテイストもうまく加味されていてプロデュース
の上手さを教えてくれる
サウンド的には音数少なく、実にシンプルで飾り気のないところが逆に楽曲の良さを引き立てている
色んな意味で魅力の尽きない名盤中の名盤にしてポップ史上に燦然と輝く原曲の如き1枚
各曲のでき( 歌詞、楽曲、アレンジ、歌唱に至るすべて )はもとより、曲順やジャケットなどの
アート・ワークまで申し分ない
ポップスの歴史における重要さ発表時の時代的背景との絡みなどもさることながら、もっとも素晴らしい
と思うのはそういうエポック・メイキングな部分をまったく知らないで聴いたとしてもきっとこの作品は
その人の心を震わせるだろう
フォークでのジャズでもブルースでもないポップスの傑作であり、数多くのカバーを生んだ名曲群にただ
ただ聴き入ってしまう
誰かが大切な人に心をこめたプレゼントを、でも相手に気を遣わせないで済むようにしたいときには
こういう1枚が永遠の日用品として重宝されるかもしれない