Jon Andersonが自身の才能を発揮した渾身の架空創話
アルバム・ジャケットを含めて非常に手の込んだ作品で、まるで大河アニメ映画のサウンド・トラックの
ような作品である
当時、これでイエス在籍メンバー全員がソロ・アルバムを発表したわけだが、それぞれが力作で、
こんなことができてしまうバンドは、それこそ怪物イエスぐらいだった
本作はリーダーであるジョン・アンダーソンの初ソロ・アルバムで、予想通りイエス風の明るい人工的
メルヘンの世界というか、スケールの大きい文学的サウンドになっている
スティーヴ・ハウもクリス・スクワイアも参加してない分、ジョン・アンダーソン自身の多重録音された
牧歌的な明るいヴォーカルや土俗的なパーカッション群、国籍不明なメロディの力強さと美しさが
いつまでも耳に残る
§ Recorded Music §
1 Ocean Song - オーシャン・ソング
2 Meeting ( Garden of Geda ) / Sound Out the Galleon - ミーティング(ゲタの庭)/ サウンド・アウト・ザ・ガリオン
3 Dance of Ranyart / Olias - ランヤートの踊り/オリアス
4 Qoquaq En Transic / Naon / Transic To - トランジック/ナオン/トランジック
5 Flight of the Moorglade - ムアグレードの飛行
6 Solid Space - ソリッド・スペース
7 Moon Ra / Chords / Song of Search - ムーン・ラ/コード/ソング・オブ・サーチ
8 To the Runner - 走者
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全体を通してメロディよりハープ、民族的な弦楽器や打楽器を多用したエキゾチックな音像が非常に
印象に残り、イエスのスピリチュアルな面を拡大解釈したようなアルバムである
独特の世界観、ヨーロッパと東洋が混じった音楽とでもいうのが透明なヴォーカルによく合った不思議な
魅力がある
イエスの叙情性の延長として肯けるところがはあるが、イエス・ファンにはやや物足りないと思う部分も
あるかもしれない
しかし、奥行きのある臨場感、また奇をてらうことなき旋律、和声音など、その音世界は聴き手に優しく
どこまでもピュアな宇宙を体感することができる
" サンヒローのオリアス "は、イエス・サウンドのヴォーカルと歌詞以外の部分でジョン・アンダーソン
が担当しているかが分かる
楽器演奏以外で表現される宇宙的広がり、ロジャー・ディーンが描くイラストの世界をもっとも忠実に
音楽化した世界、ジョン・アンダーソンの神話的世界を思う存分表現した意欲作である
楽曲として純粋に楽しめるのは、" ムアグレードの飛行 "でイエスの全メンバーもクレジットされて
いるので、ジョン・アンダーソンのソロを全員でバックアップしている
ロックとしての躍動感は低いが、ジョン・アンダーソンの音楽世界のエッセンスがそのまま凝縮されて
表現されている
イエスではあまり披瀝されていない叙情色がふんだんに詰め込まれていて素晴らしく、特に後半の
" ソリッド・スペース "から" ムーン・ラ "は郷愁が胸にいつまでも残る名曲である
" こわれもの "で自分たちの音楽の核心を正確に表現し、スリーブ・デザインでもここからロジャー・
ディーンが参加、" 危機 "で究極の音楽表現を達成したあと、2枚組のライヴ・アルバムを発表し、LPで
1面1曲( 全4曲 )という行くところまで行ってしまったイエスが、一斉にソロ・アルバムに走ったときの
ジョン・アンダーソンの作品
リック・ウェイクマンの脱退後のキーボード奏者としてヴァンゲリスが候補に挙がったが、イエスには
加入できなかったものの、このジョン・アンダーソンのソロ・アルバムには参加している
イエスに彼が参加していたらどんな音になっていたかが" サンヒローのオリアス "から予測ができる
後のジョン&ヴァンゲリスとは違い、ジョン・アンダーソンの中で完結した世界を濃密に描ききった上に
ジョン・アンダーソンの声でないと成り立たないと感じさせることがまさにソロ・アルバムである