ロックというジャンルを遥かに超えた
超人のみが成せる圧倒的芸術作品
イングヴェイ・マルムスティーンの作品の中で、一、二を争う楽曲の充実度もさることながら、やはり
特筆すべきはそのギター・プレイ、優れたギタリストであることに違いはないが、このアルバムでは
ほかを圧倒する本当に素晴らしいプレイをしている
この頃はまさに完璧で恐ろしく正確、しかもソロのフレーズは構築美にあふれているし、マーク・
ボールズのヴォーカルもマッチしている
決して明るく突き抜けない、どことなく湿り気のある彼のヴォーカル・スタイルがイングヴェイの
曲にフィットしているし、メロディアスなヴォーカルとネオクラシカルな彼の独自のフレーズで本作は
名盤となった
§ Recorded Music §
1 You Don't Remember , I'll Never Forget - ユー・ドント・リメンバー
2 Liar - ライアー
3 Queen in Love - クィーン・イン・ラヴ
4 Crying - クライング
5 Fury - フュリー
6 Fire - ファイヤー
7 Magic Mirror - マジック・ミラー
8 Dark Ages - ダーク・エイジズ
9 Trilogy Suite Op:5 - トリロジー・スーツ Op:5
§ Personnel §
Yugwie Malmsteen - イングヴェイ・マルムスティーン( G,B )
Mark Boals - マーク・ボールズ( Vo )
Jens Johansson - ヤンス・ヨハンソン( Key )
Anders Johansson - アンダース・ヨハンソン( Ds )
|
ヴォーカルにマーク・ボールズ、キーボードとドラムにヤンス&アンダース・ヨハンソン兄弟という所謂
黄金メンバーがついに集結し、制作に挑んだイングヴェイのソロ3作目にしてヘヴィ・メタルにおける
様式美を確立させた自他ともに認める最高傑作となっている
彼の代名詞でもあるクラシカルな超高速プレイはもちろん、彼のもう一つの魅力である北欧的な湿り気の
ある旋律を使用した" クライング "や、その両方をひとつの曲の中で見事に使い分けた完全無欠の大名曲
" トリロジー・スーツ "などもテイクされている
リッチー・ブラックモアのコピーから始まった彼のギタリスト人生が、過去に類を見ない早さで
前人未到の地へと到着したことを証明している
イングヴェイと互角の戦いを繰り広げているヤンスのキーボードも壮絶
アルバムを出すごとに理想とするサウンドを実現していくイングヴェイ、3作目の本作では北欧系独自の
メランコリックなサウンドをさらにハード・ロック色の強いものに仕上げている
これには、以降のイングヴェイの作品でも何度か起用されている実力派ヴォーカリスト、マーク・
ボールズに負うところが多いだろう
アルバムの流れもメリハリが効いていて、アコースティック・ギターのインスト" クライング "から
" フュリー "のハードかつスピーディな曲へ、さらに明るめの" ファイヤー "への移行などイングヴェイは
" トリロジー・スーツ "のギター・ソロ1曲の中でも、静と動をきっちりと弾き分け組曲に仕上げる
優れたセンスを発揮している
HM全盛期だった80年代、それは多くのギター・ヒーローを生み出した時代でもあり、アルカトラズで
衝撃的なメジャー・デビューを果たしたイングヴェイももちろんそのひとり…後にネオクラシカルと
称される彼の技法はまさに衝撃的だった
しかし、ギター・ヒーローも" 超 "がついてしまうと、どうしても避けられない問題が出てくる
つまり、彼らのギター・プレイをヴォーカル入りの歌に組み込もうとすると困難を極め、結果、
楽曲としてのアンバランスさが露呈してしまう
インスト・ナンバーは彼の才能を存分に堪能できるが、ヴォーカル入りの楽曲となると前述の
アンバランスさがどうも気になってしまう
次作の" オデッセイ "でヴォーカルがジョー・リン・ターナーに代わったときには、声が歌に変わった
などといわれた