" Blues - ブルース - "は、アメリカ南部でアフリカ系アメリカ人の間から発生した音楽の一種およびその
楽式で、19世紀後半ごろにアメリカ深南部で黒人霊歌、フィールドハドラー( 農作業の際の叫び声 )
や、ワーク・ソング( 労働歌 )などから発展したものといわれている
兄弟ともいえるジャズが楽器による演奏が主役なのに対して、ギターを用いた歌が主役で、アコース
ティック・ギターの弾き語りを基本としたデルタ・ブルース、カントリー・ブルース、エレクトリック
ギターを使用したバンド形式に発展したシカゴ・ブルースなど多様に展開している
ブルースとは孤独感や哀しみを表現する独唱歌であり、哀しみや孤独の感情は英語ではしばしば
" ブルー( Blue )"の色で例えられることに由来している
20世紀以降のポピュラー音楽に幅広く影響を与え、ジャズやロックン・ロールのルーツのひとつとしても
知られている
歌詞は身近な出来事、感情を表現したものが多く、日常の幸せなことや憂鬱なことを12小節にのせて歌う
アメリカ南部の黒人たちにとって身近な存在だったギターは、伴奏楽器として適していたこともあり
初期のブルースはギターに弾き語りによるものが多かった
旋律に独特の節回しがあり、一般にブルー・ノート・スケールと呼ばれている5音階( ペンタトニック
スケール )で即興的に演奏される
特に短3度、減5度、短7度の音に用いられる微妙な音の" 訛り "は" クォーター "と呼ばれブルース独特の
" 音 "であり、カントリーやジャズには基本的にはみられない音である
ギターでは" クォーター・チョーキング "=1/4音上げて演奏されることが多いが、厳密には1/4音と決まっ
ているわけではなく、人それぞれ感覚的に上げて使っている
ピアノではこの音を出すのが不可能のため、3度の音の場合は長短の2つの鍵盤をトリルしたり同時に
打鍵したりなどのテクニックを用いる演奏者もいる
また、1950年代からはジャズの影響によってテンション・ノートやテンション・コードか用いられる
など洗練さを加えてきた
∈ アメリカのブルース史 ∋
19世紀頃にアメリカ深南部で黒人霊歌、フィールドハドラー( 労働歌 )などから発展したものと
いわれている
1903年、ミシシッピ州デルタ地帯を旅行中だった白人、W・C・ハンディが同州たいとワイラーで黒人に
よるブルースの生演奏に遭遇、この後、彼は楽曲を楽譜にして発表しブルースは広く世間に知られる
ことになった
だが、ハンディはブルースを楽譜に起こしただけであり、ブルースの父というのは過大な評価といえる
この年を" ブルース生誕の年 "とする見方もあり、2003年はブルース生誕100年を記念してアメリカ合衆国
議会により" ブルースの年 "と宣言された
1920年、メイミー・スミスがオーケー・レーベルに初レコーディング、これがブルースのレコーディン
グとしては初といわれている
彼女の" Crazy Blues "は、初年度75,000枚を売り上げるヒットとなった
まだ現在知名度の高い戦前のブルース・シンガーはロバート・ジョンソンだが、当時はチャーリー・
パットンのほうが黒人の間では人気が高かった
∈ Charley Patton - チャーリ・パットン - ∋
ブルースCDガイド・ブック2.0 (SPACE SHOWER BOOKs)
- 作者: 小出斉
- 出版社/メーカー: スペースシャワーネットワーク
- 発売日: 2006/08/04
- メディア: 大型本
- この商品を含むブログを見る
戦前のアメリカにおいて、ブルースはアメリカ深南部からセントルイス、シカゴ、ニューヨークなどへ
北上し、各地でスタイルを変えながら発展した
もともとギタの弾き語りが中心であったが、都市部に展開するにつれピアノとギターのデュオ形式、
バンド形式など、より都会的な洗練された形式へと変わっていった
代表的なミュージシャンはリロイ・カーなど、しかし都会に憧れる反面、故郷への想いが強く歌詞に
影響を与えている歌が多い
シカゴでは1950年ごろからエレクトリックのバンドによるブルースが登場した
デルタ・ブルースを基調とした泥臭いサウンドで、戦前のシティ・ブルースとは一線を画すものであった
このサウンドはシカゴ・ブルースと呼ばれるようになった
その代表格がマディ・ウォーターズである
- アーティスト: Muddy Waters
- 出版社/メーカー: Not Now UK
- 発売日: 2011/04/12
- メディア: CD
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
ロックン・ロールの巨匠、チャック・ベリーもこのころのブルースに大きく影響を受け、後のロック
バンドにも受け継がれているといえる
1960年代になると、イギリスでアメリカから多くのブルースのレコードが輸入され、同国でブルースの
ブームが起きた
その流れの中でローリング・ストーンズ、フリートウッド・マック、クリーム、ジェスロ・タル
アニマルズなどブルースに影響を受けたバンドが多く登場し、ブルース・ロックが隆盛となった
∈ 日本でのブルース・シーン ∋
日本では1970年代にブルース・ブームが起こった
1971年、B.B.キングが初来日を果たし、1973年にスリーピー・ジョン・エスティスの" スリーピー・
ジョン・エスティスの伝説 "がオリコン・チャートに食い込む大ヒットとなる
1974年" 第1回ブルース・フェスティバル "開催
同フェスティバルは3回開催され、エスティスを始めロバート・ロックウッド・ジュニア&エイゼス
オーティス・ラッシュらの来日が実現した
京都、大阪を中心にウエスト・ロード・ブルース・バンド、憂歌団などブルース・バンドが登場し
日本独自のブルース・シーンが形成されていく