ジャズ・ファン系バンドのアルバムとしては
最大のヒット作となった" Travelling Without Moving "
ジャミロクワイはイギリスのアーティストで、アシット・ジャズの世界では最も成功したグループである
バンド形態をとるがリード・ヴォーカルのジェイソン・ケイのソロ・ユニットであり、ジャミロクワイは
ユニット名であると同時にジェイソン・ケイのステージ・ネームでもある
1992年にデビュー後、インコグニート、ブラン・ニュー・ヘヴィーズ、ガリアーノ、コーデュロイなど
1980年代のロンドンを本拠地とした面々とともに台頭、以降その音楽活動はポップ、ソウル、ジャズ
ファンク、ロック、エレクトロニカなどジャンルを限定しないもので、個性的な音楽的立ち位置を
模索してきたなか、本作はまさに全世界を席巻した大ヒット曲" ヴァーチャル・インサニティ "を冒頭に
配したジャミロクワイのサード・アルバムである
メロディ、アレンジ、曲の完成度と当時、誰もが画面に釘付けになった斬新すぎるプロモーション・
ビデオ、どれひとつとっても文句のつけようのないクオリティである
§ Recorded Music §
1 Virtual Insanity - ヴァーチャル・インサニティ
2 Cosmic Girl - コズミック・ガール
3 Use the Force - ユーズ・ザ・フォース
4 Everyday - エヴリディ
5 Alright - オールライト
6 High Times - ハイ・タイムズ
7 Drifting Along - ドリフティング・アロング
8 Didjerama - ディジェラマ
9 Didjital Vibrations - ディジタル・ヴァイブレーションズ
10 Travelling Without Moving - トラヴェリング・ウィズアウト・ムーヴィング
11 You Are My Love - ユー・アー・マイ・ラヴ
12 Spend a Lifetime - スペンド・ア・ライフタイム
13 Funktion - ファンクション
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実は耳あたりが良い割りに、細かいところでエッジが効きまくっている
その前衛性をもって、時代の最先端にアンテナを張り巡らせている全世界のクリエイターや周辺の
業界関係者を唸らせただけでなく、日本国内でも普段、音楽( 洋楽 )を聴かない大衆にまでアルバムに
手を伸ばさせる大衆性( ポップネス、キャッチーさ )を同時に兼ね備え、時代を彩ったセンスと
作品自体に脱帽するしかなかった
ただし、古くから一世を風靡し、流行れば流行るほど熱狂させた文化、事象、作品の宿命として
すぐに飽きられ風化していくのが定石である
パソコンは、もちろん世の中に出回っているが、まだ完全に普及していない時代、それこそまだ誰も
スマートフォンどころか携帯電話の普及率も低い頃である
" ヴァーチャル "なる言葉を最近良く耳にするが、今こそ歌詞の内容を理解しながら耳を傾けるべきで、
ジャミロクワイは地球の環境破壊などをテーマにしてきたが、この大ヒット曲で歌われている内容こそ
現在、世界そして我々自身の半径内の危険性そのものであることに驚愕する
20年ほど前にこのようなアリさまになることをまるで知っていたかのようにジャミロクワイは警鐘を
鳴らしていたのだ
より少しでも世界中全ての多くに人に届くように、抜群の作品のクオリティに加え、軽妙かつ独特の
ダンスに乗せて…
ジャミロクワイといえばこれ、という代名詞的作品で1曲目の" ヴァーチャル・インサニティ "が
素晴らしく、ファンクやダンス、ジャズも入っていて非常に心地が良い
ジャミロクワイの歌声も自由さにあふれていて、どんな表現もリズムも軽やかに奏でる技術の凄さ、
クリエイティブ面の凄さをこの曲からビンビン感じられる
しかし、ほかの曲はけっこう通好みで渋い曲が多いような気がする
それが日本では消費音楽として切り捨てられてしまった原因かもしれない…演奏の妙に重点をおいた
部分は必ずしもキャッチーとはいえない
中古屋に売り飛ばした人の大多数は、1曲目から10曲目まで" ヴァーチャル・インサニティ "のような
ものを期待し、やがてそれにすら飽きてしまったのだろう…残念なことである
ダンス ⇔ 技術というジャミロクワイの図式の中で、これはもっともその試みが成功した作品で楽曲と
しての( ジャージーなファンクとしての )よさ、演奏の素晴らしさとダンス音楽としての魅力が見事に
フィードバックするような作品は、フュージョンなどでは滅多に味わうことのできないものである
そこに" ジャミロクワイ = ジェイソン・ケイ "の方法論としての卓越したセンスを感じることができる